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大野ボブさゆりさんの「やってみよう感」に迫る

私が大野ボブさゆりさん(以下ボブ)と出会ったのは、第2回ESDユースコンファレンスの場でした。その後、何かにつけてESDにかかわる情報の中にボブを見つけるようになるのです。それはまるでウォーリーを探しているみたい(トレードマークの帽子繋がりではなく)。
「なぜこんなにもアクティブに、色々な活動に関わっているのだろう?」という疑問と、何より彼女の持つ「好きでやってる感」に魅かれて、今回インタビューしてみることにしました。
 
(内藤)
―私は教員で、「ESD」という言葉に普段接する機会も多いのですが、「ESD」という単語を聞いて思うことや最近印象的な出来事は何かありましたか。
(ボブ)
―昨年ESDをテーマとしたACCU*の研修会に参加した時に、周りの参加者が学校の先生ばかりで驚きました。印象的だったのは、「すべての先生がポジティブに参加していたわけではない」という点です。例えば、気候変動の対策に向けて何ができるかを議論した時に「環境負荷の少ない文明の利器を開発してもらう」という意見があったのですが、私としては“してもらう”という受け身な考え方に違和感を持ちました。
(内藤)
―なるほど。当日は私も参加していましたが、イベント終了後の周りの反応も様々だったと思います。各校の役割としてESD担当を「やらされている」という人も一定割合いた印象でした。そこで、今回の主題にも関わるのですが、「ESDに対して無関心な人に、どのように興味を持たせるか」について、ご自身の現在の立場で考えることは何がありますか。
(ボブ)
―フリーランスという立場で言えば、「やりたい時に、やりたい事を、やりたいようにやる」ということが一番の魅力だと思います。“やらされてる感”は全くないわけです。だから、モチベーションを常に高く持っていやすいという点は大きいと思います。あとは同じESDでも、「この分野に今は力入れたい!」という時に、そこに重点的に時間をかけられるというか。
(内藤)
―確かに、自身の力点を自分で設定できるというのは、組織人にはない魅力かもしれませんね。先程の「やらされている」と私達が感じてしまった先生方も、ご自身の興味関心に沿って、組織として自由度を高めてあげることができればもっと主体的になるのかも。一方で、組織に属さない怖さみたいなものはありますか。
(ボブ)
―いわゆる収入の不安定もありますが、時間の不安定というのが大きいと私は思います。複数の案件を抱えていると、最終の打ち合わせが夜11時からSkypeで始まる、というように際限なく活動できてしまうので。「好きだから活動できているのだな」と思います。
(内藤)
―ご自身が今持っているような「なんでもやってみよう感」みたいなものは、人生のどの場面で培われたと思いますか。例えば、学生時代の進路選択などの場面でもすでにその積極性は備わっていたのでしょうか。
 
(ボブ)
―学生時代にアルバイトをしていたときに、例えばどの段階までの学校を卒業していたかによって、働ける場所や職種に差が出るとは感じていました。根底にあったのは「考え方や出会いを広げたい」という気持ちで。だからあえて自分とは縁遠い種類の学部へと進んだりもしました。
(内藤)
―なるほど。ご自身の中で、「人との出会いを広げること」という軸が今のフリーランスの活動にもつながっているように感じますね。冒頭の「やらされている」という感覚が強い方々を、私達のようにESD実践に「ハマっている」側に変えていくには何が必要なのでしょうか。
(ボブ)
―まずは「ハマると楽しそう」という姿を私達ハマっている側が見せていくことだと思います。「ESDやらなきゃ!」というストイックな感じではなく。色々な在り方や楽しみ方があって良いということを見せない限り、「これが答えですよ」と一方的に示した瞬間に自立的ではない人を生み出している気がします。
(内藤)
―能動的にやりがいを得ることが次の意欲に繋がるわけですよね。最後に、ご自身が今後やってみたいことを教えてください。
(ボブ)
―今動き始めていることとしては、ワークショップの場に見守り保育をつける取り組みです。従来託児が付くイベントは子育てに関するものが多く、ESDを含めたワークショップに子育て中の女性が参加するのは困難を伴うときがあります。この状況を改善するという目的と、様々な年齢や立場の人が混在するワークショップの場に子どもがいることで、何か良いことが子どもにも大人にも起こるのではないかと期待をこめています。
(内藤)
―なるほど。大人の学びの場に子どもがいるだけで、子どもにとってもそれは学びですし、大人が子どもを深く理解するという点でもわくわくする取り組みですね。少子化の中で、子どもを社会全体で育てるという視点は外せないと思います。引き続き、ご自身の活動を通じて周りを刺激して、「ハマっている」人を増やしていってください。本日はありがとうございました。
 
「大野とだから一緒にやりたい、と言われたい。」と彼女は語ってくれました。思わず私も「いいねぇ、何かやろっか。」と返します。これが彼女の持つ最大の魅力だと思います。
 
*公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)
http://www.accu.or.jp/jp/index.html
ユネスコスクール公式ウェブサイト
http://www.unesco-school.mext.go.jp ユネスコスクール事務局としてACCUが運営

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訪問先

大野ボブさゆりさん
「モザイクアート」のように、ひとつひとつのいのちがそれぞれの色や形で輝く世界を目指して生きている。様々な国籍、世代、立場の人が一緒に過ごすことのできる場づくりが好き。

記入者

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内藤 圭祐(名古屋国際中学校・高等学校 教諭)
名古屋国際中学校・高等学校教諭・英語科主任。ユネスコスクール担当として校内ESDに関わる。同校では「多文化共生と減災」「経済活動と貧困」「社会生活と循環」をESDの学習テーマとして設定し、これらを深く学習する学校設定科目「SIA特論」の授業を担当している。(SIAはSustainability in Action !の略)