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コープ自然派ピュア大阪の活動源は子どもを想うお母さんの気持ち

コープ自然派ピュア大阪の活動源は子どもを想うお母さんの気持ち
~食から見えてくるくらしと政治~

たべる~くらす~つながる
 
 取材を通じてコープ自然派ピュア大阪(以下「ピュア大阪」)の第5次中期計画(2016~2018年)が2016年に策定されたことを知りました。これに従いピュア大阪の活動計画が立てられ実施されています。今回はこの第5次中期計画についてご紹介しましょう。
 理念として『私たちは、自立と協同の力で 豊かないのち・自然・暮らしを大切にし 未来に夢を持てる社会を創ります』を掲げ、3つのビジョン『たべる』『くらす』『つながる』を柱とされています。
 『たべる』では身近な「たべもの」をきっかけに、農や環境、食の安全について学び、商品の利用を通じて生産者との関係を深め、次世代につなげる活動を、『くらす』では、世代、異文化、障がいの有無を超えて助け合うこと、原発事故や大規模災害への防災意識を高めること、一人ひとりが大切にされる地域社会をめざし、人権・ジェンダーフリーを学ぶことを、『つながる』では、平和で持続可能な社会に向けて、地産地消、脱原発、フェアトレード、貧困・教育・TPP等の社会課題について関心を持つこと…等を挙げています。
 最近のテーマをあげると、商品カタログに載っているワイン工場見学、添加物、ママと子どもの冷え対策、災害時の乳幼児支援、マクロビオテック、LGBT、戦跡見学、憲法改正による国民投票等々、身近な生活に関することだけではなく、くらしと政治が密接に繋がっていることが自然と見えてくるような会が多く開かれています。詳しくはピュア大阪のFacebookページをご覧ください(https://www.facebook.com/coop.shizenha.osaka/)。
 
子育て世代のお母さんが中心
 ピュア大阪の中心メンバーは30~40代の子育て世代の女性。組合員の7割はこの世代です。先に挙げたビジョンは、3万人の組合員にアンケートを取った後、希望者でグループワークを開き決定されました。若いお母さん世代が中心の団体には珍しいと思いその理由を聞いてみました。
 
きっかけは子ども
 結婚前は自分の食生活に関心のなかった人でも、子どもが生まれ、その子どもが何らかのアレルギーを持ったことをきっかけに、「子どもにいいものを食べさせたい」と食に興味が湧くそう。そんなお母さんが、コープ自然派の商品を使ったプチパーティーでコープ自然派の食へのこだわりを知り、組合員に。商品カタログにも食の背景(生産者、作られ方)が載っていることもあり、食をきっかけに食の背後にある問題を知り、農薬やTPPなど、食が政治の問題と密接に繋がっていることに気がつくから様々なテーマの組合員活動があるのですね。ピュア大阪の活動の幅広さは、お母さんが「子どもを守りたい」という気持ちの表れなのだと感じました。
 
活動しやすいポイント
 家事に育児に忙しいはずのお母さんがなぜ活動しているのかというと「日々の忙しさだけで終わらせたくない」という想いから。家に篭っていると社会から取り残された気持ちになり、社会参画したいという気持ちが膨らむようです。
 驚くことに、ピュア大阪の勉強会や会議は全てお子さんが1歳~OKの託児つき。しかも託児は外注ではなく「キッズ活動の会」という組合員の活動の一つで行っています。活動時間が平日の午前中が多いのもお母さんが出て来やすいポイントです。理事さんから、活動しているお母さんたちは、“みんな生き生き元気だ”、と伺いました。初めは組合員だった人が、いずれ企画者へ、企画・運営に慣れた人が理事へと育つという好循環が生まれています。お母さんが活動に参加しやすい工夫があり、子育て世代がアンテナを張って、リアルタイムの課題を同世代の視点から発信できる場とベテラン理事さんの若手の声を聞く姿勢があるから、ピュア大阪の活動は活発なのだと思いました。
 
 インタビューを終えて
 SDGsのスローガンは「だれ一人取り残さない」のはずですが、日本のESDやSDGsを考える場に参加する年齢層を見ると、多様性に欠けていると思います。政治や会社、社会課題を考える場に、当事者の声を届ける人が参加しなければ、その声はなかなか反映されません。こうした場に、託児や、手話や、ネット配信等の工夫をすれば、もっと多様な声が届くようになるでしょう。ちょうど今「#子連れOK」というハッシュタグが広がっていますが、SDGsに興味がある私たちが先陣を切って、議論の場から「だれ一人取り残さない」を実現させる必要があるのではないでしょうか。
②-1 大橋さん:写真1_r

訪問先

生活協同組合 コープ自然派ピュア大阪
生活協同組合は、消費者一人ひとりがお金(出資金)を出し合い組合員となり、協同で運営・利用する組織です。全国各地にさまざまな生協がありますが、それぞれが独立した法人として運営されています。その中でもコープ自然派は理念も商品も持続可能な社会を目指しています。理念は『子どもたちの未来のために原発のない社会へ コープ自然派は、生産者との顔の見える関係を大切にし、自然と共存する暮らしをめざしています』。商品の取り扱い基準としては、有機農業の推進、生産者を守るための適正価格での購入、生物多様性の保全、遺伝子組み換えのない商品、えさや動物福祉から考えている、畜産・水産物、食品添加物の削減、包装の簡素化、国や福島県の基準より厳しい放射能測定とクリアな情報公開…等の項目があります。コープ自然派の商品カタログには、商品へのこだわりや生産者の声、農薬と子どもの発達障害の関連を指摘する記事等の社会問題も載せてあり、カタログ自体が立派な読み物です。食べ物をきっかけに身近な問題、食の背後にあるものを考えることができます。商品を買うこと自体が環境を守る活動なのです。
コープ自然派ピュア大阪は大阪府内を拠点とする組織です。組合員と呼ばれる利用者は2017年時点で約3万人。2018年で20周年を迎えます。

記入者

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大橋 寛実(公益社団法人 大阪自然環境保全協会)
大学生時代より、小学校への環境教育の出前授業を始める。卒業後も働きながら、森のようちえんの手伝い、指導者育成、放射能に不安な家族を大阪に1週間招く保養キャンプなど“子どもと自然”に関わる活動を続ける。これまでの活動の中で、「自然の大切さを伝える一方で、自分の日々の暮らしが持続可能ではない」というもやもやが募り、2016年からは田舎のなりわいを学びながら自然に寄り添った暮らしを模索している。