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子どもたちが考える気候変動―箕面こどもの森学園2/3―

箕面こどもの森学園は、2015年にユネスコスクールに認定されました。2017年のユネスコスクールの課題は“気候変動”がテーマとのことで、2017年1学期のワールドオリエンテーションの時間に“気候変動”について取り組まれました。
 
子どもたちの学びとしては、最初に気候変動や野生動物の保護に取り組む環境団体や、地域の環境施設の方などをお呼びしてレクチャーからスタート。といっても年齢によって理解度が違うので、低学年クラス、高学年クラス、中学部と理解度に応じて分かれての学習です。その後自分たちが興味のあることを、本やインターネット、企業への取材を通してさらに掘り下げた後、アウトプットの場として、保護者や一般の方も参加可能な学習発表会の場で、学んだことを発表しました。具体的な行動をしようと、自分たちができそうなことを話し合って決める、というところまでが一連の流れです。
 
低学年は“気候変動”といってもピンと来ないので、「地球レスキュー大研究」と題し、クイズやDVD、スタッフオリジナルの本、動物に詳しい講師の方のお話を通して、「地球が熱くなっていて、それにより動物が困っている」ということを学びました。発表では、地球を救うため、自分たちができるアイディアを劇で表現したり、理想の地球をイメージしたジオラマを作ったりと目で見てわかりやすい発表でした。
 
高学年は個人またはグループでの発表。サンゴの白化や酸素と二酸化炭素の排出の関係、野生生物の危機などをまとめ、人間だけでなく、たくさんの動植物が気候変動で絶滅などの影響があることを発表しました。パリ協定やアメリカ大統領など、時事的な言葉もありました。
 
中学部は個人での発表です。『気候変動による動物への影響』を調べた人は、気候変動によって絶滅の危機にある動物がいる一方、熱帯性の気候が増えることで新たな生態系ができ、結局は適応能力が高い動物が生き残っていくのではないかとまとめました。『地球温暖化が進むと医療保険はどのようになっていくのか』調べた人は、国のお金の使い方にまで発展していました。『エコという商品は本当にエコなのか?エコで儲けている人もいるのではないか』という仮説を立て、エコカーや太陽光パネル、LED電球を製造しているメーカーに問い合わせて、製造過程から廃棄までを考えて本当に環境に負荷がないのか調べた人や、そもそも『地球温暖化は本当に起こっているのか』というテーマを調べた人もいました。いろんな情報に触れる中で、一部の人の都合で変えられているような情報や、事実を極端に伝えていることもあるので、情報との接し方によってはその情報を作っている人の意見に動かされてしまうかもしれない、と鋭い視点でまとめた人もいました。
 
発表の後、“地球レスキュー子ども会議”と題して、自分たちが地球のためにできることを話合いました。今回の発展として、希望者で学校のエコクラブを作ったり、お家でもエコ魔になり、ご家族にエコな行動を促したりしている子もいるそうです。
 
取材前は「“気候変動について学んだ”と言っても、ゲストスピーカーを呼んで、お話を聞いて感想文を書いて終わりくらいだろう」と思っていました。まさかこんなに深く学んでいるとは想像していませんでした。また「“気候変動”は様々な情報があふれているため、難しいテーマで、スタッフの考えによっては偏ってしまうのでは」とも思っていました。スタッフはテーマを掲示するときに「この問題はこうです」ではなく「こういう考え方もある」と言うのだそう。選ぶのは子どもたち自身。前編で書いたように、こどもの森では、普段から自分の意見を言える環境があります。意見が対立しても相手を自分色に染める必要も、人の色に染まる必要もなく、どうすれば歩み寄れるか、納得できるかを目指す場があります。だから“気候変動”がテーマでも「そもそも本当に地球温暖化が起こっているのか」と考えてもOK。“批判的・多角的な視点で学ぶ”ということが中学部の学習の特徴の一つですが、情報をそのまま受け取らず、自分で調べ考える力を中学部の人たちは持っているのですね。これはESDが目指している批判的な学び(critical thinking)そのものであり、また、ESDが大切にしている多様性の尊重でもあると感じました。
 
 
●小学部の発表の様子
http://kodomono-mori.com/blog/?p=8858
http://kodomono-mori.com/blog/?p=8931
●中学部の発表の様子
http://kodomono-mori.com/chugakubu/blog/?p=3288

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訪問先

訪問先 NPO法人 箕面こどもの森学園
『子どもは自ら学ぶ意欲をもち、自らの力で学ぶことができる』という教育観に立ち、子どもたちの自立的な学びを自立支援するオルタナティブ・スクール。子どもの興味・関心を学習の中心にすえ、子ども自身の生活から学習を組み立てるフレネの教育やイエナプラン教育の考え方と方法を取りいれている。生徒は、6歳~15歳までの約60名。2015年にユネスコスクールに認定。2016年にサスティナブルスクールの重点校に認定

記入者

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大橋 寛実(公益社団法人 大阪自然環境保全協会)
大学生時代より、小学校への環境教育の出前授業を始める。卒業後も働きながら、森のようちえんの手伝い、指導者育成、放射能に不安な家族を大阪に1週間招く保養キャンプなど“子どもと自然”に関わる活動を続ける。これまでの活動の中で、「自然の大切さを伝える一方で、自分の日々の暮らしが持続可能ではない」というもやもやが募り、2016年からは田舎のなりわいを学びながら自然に寄り添った暮らしを模索している。