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身近な地域での活動と教育の大切さ

今回、北九州のESD活動について取材するために、北九州ESD協議会の原賀いずみ氏を訪ねた。
北九州地域では、教育機関・市民団体・企業・行政などから構成されたESD促進のためのネットワーク組織、北九州ESD協議会が2006年に発足し、国連大学から国内4カ所目の「ESD促進のための地域の拠点(Regional Centre of Expertise on ESD: RCE)」に選ばれた。
協議会には、2017年1月現在、団体会員75団体が加盟しており、さらに個人会員の募集も行い、ESDの輪を広げている。
今回は、取材させていただいた中の主な取り組みとして、「聞き書きプロジェクト」と「布絵シアター いのちの木 英語名:A seed of ESD tree 」を紹介させていただきたいと思う。

①聞き書きプロジェクト
10月から11月の五日間、「北九州まなびとESDステーション」にて、持続可能な担い手づくりとして「まなびと講座」が実施された。今年のテーマは、「SDGsとESDの種さがし」と設定し、5つの大学から68名の学生が参加した。講座では、学生が交流しながら、講義や対話、聞き書き等のプログラムを通じて学びを深めた。
その中でも、特にユニークかつ地域に密着した取組として挙げられるのが、「ESDの種聞き書き」である。企業や市民、行政など、様々な立場から持続可能な地域づくりのために問題解決に取り組んでこられた方々を「ESDの種人(種人さん)」と名づけて活動に協力いただいたとのことであった。本講座に参加した学生は、2人の種人さんにインタビューを行い、講座最終日の発表会にて、種人さんの活動をSDGsの視点からまとめて発表を行った。
「オリジナリティにこだわりたい」
地域で活動を続けてきた原賀氏の思いが詰まった一言であった。地元で問題解決に取り組んでこられた方々を大切にし、そこから学び、これからに繋げていく。まさに、ESD的な活動(持続可能)であると感じた。また、「聞き書きプロジェクト」を通して、学生がSDGsに関連付けて考え、まとめ、発表する活動は、ESDやSDGsの考え方をより身近にする事例としてとても重要であると感じた。
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②布絵シアター「いのちの木 英語名:A seed of ESD tree」
「持続可能な地域づくりや問題の解決のためには、地域再発見と、インタープリテーション※が不可欠です」
原賀氏は「見て!さわって!感じる!」北九州インタープリテーション研究会の活動として、「布絵シアターかばんミュージアム」というオリジナルな手法で北九州内外、日中韓の環境教育交流の場で発信している。身近な自然に目を向け、子どもたちに自然の素晴らしさや公害克服の歴史を伝えるオリジナル教材である。地域に根差したテーマ・登場人物を大事にしながら作られるストーリーは、参加型・即興上演を行っているという。
参加することで、より地域の問題について身近に感じ、感じる事で考える。そして、問題の解決に向かって行動を起こすという一連の流れは、教育的な効果の高い活動であると感じた。
※インタープリテーション…通訳するという意。「自然・文化・歴史(遺産)」をわかりやすく、人々に伝えること。また、自然について知識そのものを伝えるだけでなく、その裏側にある“メッセージ”を伝える行為。あるいは、その技能のこと。(フリーマン・ティルデン Freeman Tilden)
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今回のインタビューで、「美術教育は、まさにESDである。そして、教えることにひと手間加える」という原賀氏の言葉が特に印象的であった。それまでの自身の経験や培ってきたことからひと手間加えた「伝え方」をする。そして、「地域を守る人を育てるためには、守れる人を教育することが必要」という原賀氏の言葉に力強さを感じた。
北九州ESDの「原点」は公害克服であるといわれる。1960年代、北九州地域は、日本の近代化・高度経済成長をけん引してきた一方で、深刻な公害をもたらした。その際に、公害問題について取組をはじめたのは、婦人会(母親たち)であった。自発的に問題について調査し、運動を起こすこと。また、皆がそれに協力して解決できた。そして、現在では、これまでの経験を生かして持続可能な社会を担う「次世代の育成」に取り組んでいるという。
身近な地域でこつこつと一歩ずつ活動を長く続けて行くことの大切さ、そして活動の基盤となり、その中核となる人材を育む「市民教育」の大切さを今回のインタビューを通じて感じた。そして、まさに北九州で行われている活動は、過去も現在も未来も大切にした取組であると感じた。今後、私自身も、身近な事から「持続可能なこと」について考えを深めるとともに一歩を踏み出していきたいと思う。
「ESD(いい未来!その一歩で!できるっちゃ!)」

訪問先

原賀いずみさん(北九州ESD協議会)
北九州インタープリテーション研究会代表
豊の国海幸山幸ネット事務局長
北九州ESD協議会広報委員長
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記入者

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與儀 滝太(独立行政法人国立青少年教育振興機構 国立山口徳地青少年自然の家)
大学在学中から地域でワークキャンプや野外フェス等の企画・運営に参加。
大学卒業後は、沖縄県立の青少年教育施設にて勤務。学生ボランティアコーディネーターや留学生交流事業を担当。
第2回ESD日本ユースコンファレンスに参加。平成29年4月より現職。
ネットワークの構築・深化に重きを置いて活動中。