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エンガワで、ESDワカモノが語らう

「ESDに求められるのは縁側のような場づくりである」という言葉を耳にして、若者(私)はSNSを思い浮かべた。
 
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 この言葉は、東京都板橋区で50年以上ESD(おそらく、ESDという言葉ができ上がっていない頃から)を実践されてきた、NPO法人ボランティア・市民活動学習推進センターいたばし副理事長の加藤勉さんから紡ぎ出されたものである。全国フォーラムの登壇者として、この言葉を話されていた時、温かい空気が流れていた事が記憶に残っている。そして、フォーラムの終盤にグループワークを行った際に、私がいたグループで議論の幹となったキーワードがまさに「縁側」であった。若者たちに、縁側のようなプラットフォームをどう作っていくべきか。そして、いかに敷居を低くし、ESDに関わりやすい場作りをするかということだ。その中で考えたことは、若者にとって日常である、ソーシャルメディアを利用した場作りである。 家の中をESDの実践の場とすると、縁側はちょうど「ESDの現場」と「ESDに関わりのない外」の間ということになる。「ESDの目的であり、その素晴らしさでもあるポイントは、多様な人々が繋がるネットワークである。」「でも、実際にESD実践者と周りの人では、ESDへの愛情に温度差があるよね。」これらESDの良い点をさらに広め、課題を補う手段をソーシャルメディアが担うことはできないだろうか。今回のレポーター研修でも学んだ、若者が行動に至るまでの流れを踏まえて考えてみたい。
 
今の若者はどう「行動」に結びつくのかを考えよう
 全国フォーラムの前日に行われたレポーター研修では、一般社団法人Think the Earthの上田壮一さんより、他人ごとを自分ごとに変える方法とは何かについて学ぶ機会があった。以前から、「ESDをどうやって周りに広めていくべきか」と悩んでいた私にとって、とても刺激のある時間を過ごすことができた。
 電通が提唱するソーシャルメディア時代の生活者行動に、Sympathize(共感する)、Identify(確認する)、Participate(参加する)、Share&Spread(共有、広げる)の頭文字を取った「SIPS」という概念がある。「SNSで他者とつながりを持つ若者は、そこでの共感や情報の信憑性の確認を経て消費行動に至る」という流れである。これをESDで活用してみよう。これからの若者をESDに引き込むためには何を意識すべきだろうか。
 
Sympathizeする
 私は中高一貫校で教員をしている。生徒に「世界の貧困について考えよう」と投げかけてもなかなか相手には響かない。今回のフォーラムでも、ESDのテーマやSDGsを、それぞれの地域や関わる人々の立場に「噛み砕いて」考えることが大切だ、という意見が様々な場面で出ていた。貧困で言えば、「食べ物のない暮らし」と噛み砕いてもよいし、「大学生で一人暮らしする時に必要なお金」を連想させて、生活とお金の関わりを意識させてもよいだろう。他人事のテーマではなく、「自分ごと」に導く共感が大切である。
 
Identify& Participateする
 自分ごとの立場から、貧困について深く知り、解決策を考えようとする時、次に何をするのだろうか。Yahoo!かGoogleのツールバーに「世界の貧困 解決法」と入力することだろう。今の若者の情報確認ツールは何よりもインターネットである。ここで彼らは、貧困とは何かを確認する。そして、例えばNGOのFacebookページなどを閲覧し、その活動に「イイね!」する。これは一種の参加行為であり、身近なESD活動の1つであると思う。裏を返せば、ESD活動をソーシャルメディア上で発信することは、現在は必須項目であるということだ。
 
Share & Spreadする
 ソーシャルメディアの最大の利点は、自分の発信に対して、周りからの評価を容易に受け取ることができることだ。例えば、Facebook上でNGOの取り組みに「いいね!」したり、自分のESD活動を発信すると、その自分の行動に対して「いいね!」が返ってきたり、コメントを貰えることもある。そして、このフィードバックを得る喜びが次のESD活動の大きなモチベーションとなることだろう。誰かの頑張りをシェアしたり、自分の成果がシェアされることで、ESD活動が広がっていくのである。
 
#ESDワカモノの可能性
 SIPSの観点から若者とESDの関わりを考えると、身近な取り組みをお互いが発信・コメントしあいながら情報交換する場をSNS上に設けることで、「その取り組み面白そうだなぁ。」という興味や「自分もESDの実践者なんだ!」という自信を若者に持ってもらえるのではないかと思う。そこで紹介したいキーワードが、「# ESDワカモノ」だ。
 #(ハッシュ・タグ)は、特定のテーマを検索して一覧表示するために用いられる記号である。すなわち、「#ESDワカモノ」という表記を用いて、自己の活動を様々なSNSで発信していけば、他の活動やESD実践者と繋がることができる。この役割は、まさに敷居の低い縁側の機能を持っているではないか。「#ESDワカモノ」は、デジタルな縁側(ここでは「エンガワ」と記す)としての価値を持つ試みだと思う。
 私自身も今後、社会人ESDユースレポーターとして、自己の実践に一層の責任を持ちつつ、取材や全国フォーラムで構築されたネットワークを活用して、ワカモノの輪を広げていきたいと考えている。その役割の第一歩として、まずこれをお読みいただいた皆さんへ。
 皆さんのSNSで、「#ESDワカモノ」をつけて何か1つ発信してみてください。きっとユースレポーターの誰かが「いいね!」をしますよ。

訪問先

ESD推進ネットワーク全国フォーラム2016

記入者

内藤 圭祐(名古屋国際中学校・高等学校 教諭)