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全国からESD実践者が集い開催されたフォーラムから感じたこと

ESDに関する全国フォーラムが開催され、地域のESD実践者が集まった。ESDに関わり始めて間もない私がフォーラムから感じたこと。 
 
 これまで全国各地で取り組まれてきたESDをより浸透させ、次のステージへと発展させることを目的に設立された「ESD活動支援センター」と各地域をつなぐ「ESD推進ネットワーク」の第一歩として、「ESD推進ネットワーク全国フォーラム2016(以下フォーラム)」が開催された。「ESD第2ステージ:未来をつくる学びの俯瞰図」と題し、基調講演や事例紹介、パネルディスカッション、えんたくんミーティング(ワールドカフェ)など、三部構成で進められた。参加者は、NPOや行政、教育機関、企業など185名にも及び、なかには、ESDに従事し10年以上というベテランの方も参加していた。およそ8時間に及ぶフォーラムを終え、参加者は疲れた表情ではあるものの、イキイキとしていた。終了後も立ち話が止まらない熱気。この濃密な時間で得たノウハウやアイデアを自組織や地域に持ち帰り、課題解決に向けいち早く動き出したい、といった様子であった。ESDに関わり始めたばかりの私も地元に帰り、まずは地域や人と繋がり、そして繋げ、地域課題の解決に向け、初心に立ち返って邁進したい思いである。
 
 第一部では、昨年国連にて採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の話がされた。SDGsは世界を変える17の目標(ゴール)であり、世界の共通目標として掲げられた。この目標に向け国際・国内の課題解決に取り組み、地域づくりを行っていくのである。最後に、「SDGsが掲げる17のゴールを達成するには、若者のアクションが不可欠。足元のアクションが大切」と、国連広報センターの根本氏は締めくくった。
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 このフォーラム前日から「社会人ユースESDレポーター」がスタートし、私もメンバーの一員として、地域のESD事例をレポートしていく。このレポーターによる情報発信も若者による足元(地域)からのアクションとして、SDGsの目標を達成するために重要な役割を担っていると感じた。私たちのアクションが他の若者のアクションへと繋がることを期待し、地域ESDの事例を発信していこうと思う。
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 第二部では、NPO法人ボランティア・市民活動学習推進センターいたばし副理事長加藤氏が実践報告を行った。ボランティア元年と呼ばれる1995年以前から、地域で「中学生ボランティア講習会」を開催、国連ESD10年を視野に入れた取り組みの実施、地域や行政とも連携をした活動の展開など、地域ESDにおける先駆的事例である。冒頭、ファシリテーターからの紹介で「ドロドロしたESD事例」という表現がされたが、まさにその通りであった。
 個人的に、印象に残った点として「地域は『高尚恐怖症』である。高尚な話ではなく、俗っぽい話でないといけない。」という地域との関わり方や「行政に迎合してはいけない。一番大切な『活動の軸』を忘れてはいけない。」という行政との距離感や関わり方に関する点である。私が所属する高知市市民活動サポートセンターでは、行政や地域の方々と関係を持ちながら活動を行っている。その為、自分自身の活動と重なり、考えさせられた点であった。地域や行政との関わり方は柔軟性を持ちながらも、自分たちの想いの部分はしっかり持ち活動に取り組んでいこうと改めて思った。
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 第三部では、ESD推進ネットワークとESD活動支援センターの役割について、阿部センター長から紹介、スピーカー三名からの発表の後、参加者によるえんたくんミーティングが行われた。ここでは、本フォーラムの感想や推進ネットワーク・ESD活動支援センターに期待することなどが話し合われた。回ることができた円卓では、「ESDを長年推進してきた地域のキーマンがいなくなっても回るように、次世代をしっかり育む必要がある」、「あまり関わりのない方には、ESD=環境・国際というイメージがある」、「ESDが目的になってはいけない。課題を見つけ、その解決に力を注ぐべきである」、「ESDはもっと全国に広がってほしい」などという意見が出ていた。
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 多くの地域が人材育成に力を入れ取り組みを行い、人材が育っている地域もあるがキーマンにはなっていない、ということはよく耳にする。具体的に「キーマンがいなくなった時の後継者育成」というのは人材育成の次のステップとして、地域の持続性を考える上では重要な視点であると感じる。
 また、ESDに対する「環境・国際」というイメージは、私も持っていた。このイメージから「自分の活動とは違う領域のキーワードである」という判断になり、結果的にESDに対する「無関心」に繋がったと考える。今後、ESDをどうデザインし、発信していくかが重要になる。その点、今後始まる社会人ユースESDレポーターは、これまでとは違う角度からの発信になり、イメージの払拭と新たな層への広がりが期待できると考えている。
 
 全国への広がり具合に関しても、ESDに関わり始めて間もない私ですら広がっていないと感じる。というのも、私が住む高知県でのESDに関する認知度は低く、知っている人は深く知っているが知らない人は言葉も聞いたことがないという状態である。おそらく高知県に限らず他の地方でも見られるはずである。今回のESD活動支援センター設立が地方へのESD推進に繋がることを期待しつつも、地方は地方で独自に繋げ広げていくことが必要であると感じる。第三部のえんたくんミーティングは、その第一歩として良い時間だと感じた。実践者の皆さんが円卓を囲み、ESDに関するノウハウや課題意識が共有され、「ああでもない、こうでもない」と話すことで、全国各地に「世界を変えよう」という想いのムーブメントが少しずつ繋がり広がっていくと感じた。
 私にとってESD実践者の皆さんとのコミュニケーションは、非日常の経験であり、世界を変えようとする熱い想いやESD的な視点、考え方などに新鮮さを感じるとともに刺激を受けた。私も皆さんのこの熱い想いに負けず、ミッション達成に向け取り組みを進めていこうと思う。まずは、四国エリア社会人ユースESDレポーターとしてできることはなにかを考えていきたい。
 
 国連ESDの10年を継承・発展させる「ESD推進ネットワーク」、そして地域と地域のハブとなり支援を推し進める「ESD活動支援センター」が担う役割は大きく、期待が集まっている。そして、今回のフォーラムの開催がESDの推進ひいては地域課題の解決へと繋がる大きな糸口になったと感じた。

訪問先

ESD推進ネットワーク全国フォーラム2016

記入者

尾崎 昭仁(高知市市民活動サポートセンター)