生業と地域活動から築かれたネットワーク。地域での暮らしから、見えてくる「持続可能」な「教育」の在り方とは。
「なんでそんな活動するの。そんな事やっても意味ないでしょう。」そういった心ない言葉が聞こえて来ることもあると言う。そんな言葉が聞こえて来ても、多くの仲間と活動を展開する仲本氏は次のように語る。「本当に(地域での)活動をする人がいなくなったら、地域が潰れてしまう。僕たちが地域の中学校で職業人講話をしたり児童育成業に関わっているのは、子どもたちの為でもあるけど、『地域や暮らし』があることが大前提にあるからなんだよ。」
仲本氏は、市の教育委員会から依頼を受けて、市内中学校の1年生・2年生向けに「職業人講話」を行っている。地元地域に戻り、琉球ガラス工房を立ち上げた経験や地域活動を通して感じてきた「臆することなくチャレンジすること」、「一生付き合う仲間を作ること」の大切さを中学生には伝えているという。
また、地域の青年団体の中心人物として、北海道児童会との児童交流事業(今年で43回目を数える)に携わっている。沖縄の子ども達が、北海道の子ども達と交流し異なる文化に触れあう事業を継続・発展させている。さらに特筆すべきことは、三線や踊りなどの沖縄の文化を学び、練習し、北海道の子ども達に向けて発表する機会を設けているという事である。生まれ育った地域の文化や歴史を学び、発表するという質の高い学びに繋がる取り組みであると感じた。
地元地域における活動ばかりではない。2016年に起きた熊本地震では、それまでに培って来たネットワークから、企業に呼びかけ物資を集めて熊本に飛んだ。
「熊本にも、九州にも仲間がいる。自分に出来ることがあれば協力したい。」そう語る仲本氏の言葉から地域づくりやつながりの本質が見えてくると感じた。
今回の取材において、子ども達が何を感じ、どのような展開に繋がっているのか等の具体的な教育効果は、正直な所見えては来ない。しかしながら、「持続可能」な「教育」を行うシステム(仕組み)という考えから見つめるとどうだろう。
地域での様々な活動を通して、多様なヒト・モノ・コトが関わり、子どもと大人が共に学び合い「地域の暮らしの中で地域の担い手が育ってくれればいい」と仲本氏は語る。
肩ひじ張らずに、暮らしの中で本音で結ばれる関係、つながり。綺麗ごとではなく、そういった関係や密度の濃い時間を大人と子どもが共有する。
『暮らしの中で地域の担い手が育つ』には、持続可能な社会・地域づくりの目指すべき姿があるのではないだろうか。
訪問先
琉球ガラス職人・仲本庄吾(なかもと しょうご)さん約10年の琉球ガラス工房における修行を経て、自身が生まれ育った地元・やんばる(沖縄本島北部地域)に、琉球ガラス工房・PGO glass art okinawaを設立(2014年)。「地域に根ざした事業所」を目指して、生業と地域づくりの両輪で活動を展開。