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【ファストファッションの脅威】
2025年3月27日に「ファストファッションが環境における惨禍を加速させ、毎秒、ごみ収集車1台分の衣類が焼却されているか、埋め立て地に運ばれている」と国連事務総長が警鐘を鳴らしました。
【ごみゼロ国際デー(3月30日)での国連事務総長の演説】
「ごみゼロ国際デー」(3月30日)の記念イベントで演説したアントニオ・グテーレス国連事務総長は、「着飾ることが地球の命を奪いかねない」と強調し、テキスタイル(繊維製品)産業が地球に与える壊滅的な影響を抑制するための緊急行動を呼びかけました。
ファッション業界は世界で最も環境を汚染している部門の一つであり、全世界の温室効果ガスの排出量の最大8%を占めています。
また、年間215兆リットルというオリンピック競技用プール8,600万杯分に相当する膨大な水を消費するばかりか、大量の化学物質に依存しており、その多くが人の健康や生態系に有害です。
こうした驚異的な数字にもかかわらず、衣類はこれまでにないペースで生産され、廃棄されています。それを引き起こしているのは、持続可能性よりも速さと使い捨てを優先するビジネスモデルです。
【私たちの衣服に織り込まれている危機】
グテーレス事務総長は、ファッションに関連した廃棄物危機は、はるかに大きな地球規模の課題の一つの兆候にすぎないと警鐘を鳴らしています。
人間は毎年、全世界で20億トンを超える廃棄物を出していますが、これは標準的な輸送コンテナにこれらの廃棄物を積載すると地球を25周するほどの量に匹敵し、土地、空気、水を汚染し、最も貧しいコミュニティーに不当に影響を及ぼしています。
「富裕国は、旧型のコンピューターから使い捨てプラスチックに至るまで、さまざまなごみでグローバル・サウスを溢れかえらせている」と事務総長は述べています。
多くの国々では、海岸に投棄されたごみのほんの一部を処理するインフラさえも不足しており、汚染の増加や、ウェストピッカー(waste picker)たちの人体に有害となる労働環境につながっています。
【今年の焦点は、ファッション】
今年の「ごみゼロ国際デー」はファッションに焦点を当て、その驚異的な資源消費と汚染レベルを浮き彫りにしています。ファッションはトレンドの変遷が早い業界であることから、衣類はほんの数回着ただけで捨てられてしまうことが多いのです。
専門家は、衣類の寿命を2倍にすることで温室効果ガスの排出量を44%削減できると推計しています。
一方で、ファッションは生活や暮らしをより良く変革する素晴らしい機会を提供してくれる産業でもあります。
「デザイナーたちはリサイクル素材の活用を試みています。消費者はますます持続可能性を求めるようになっています。多くの国々でリセール(再販)市場が活況を呈しています」グテーレス事務総長はこのように述べ、あらゆる人々が廃棄物との闘いに貢献するよう呼びかけました。
【グリーンウォッシングを回避する必要性】
事務総長は、各国政府が持続可能性とごみゼロのイニシアチブを推進する政策や規制を制定しなければならないと述べています。
企業は「グリーンウォッシング(見せかけだけの環境配慮)」を脱却し、サプライチェーン全体で廃棄物を削減し、循環性を高め、資源効率を改善する、真の措置を講じなければなりません。
消費者の側もまた、耐久性のある製品に価値を見出し、過剰な消費を控え、リセール市場を活用するなど環境に配慮した選択をすることで、重要な役割を果たすことができます。
「グリーンウォッシングが入り込む余地などないのです。企業は、サプライチェーン全体で循環性を高め、廃棄物を削減し、資源効率を向上させなければなりません」事務総長はこう強調しました。
ファッション業界にとどまらない、廃棄物とのより広範な闘いにおいて、世界的な協調が必要だと事務総長は続けています。
10億を超える人々が適切な廃棄物管理のないスラム街やインフォーマルな居住地に住んでいることが、深刻な健康リスクにつながっています。無秩序な投棄や不適切な廃棄物処理の慣行によって、世界中で汚染や生物多様性の喪失が悪化しています。
グテーレス事務総長は「私たちが自らの行動を正し、私たち全員にとってより健康的でより持続可能な世界を築くべく、自身の役割を果たすことを決意しようではありませんか」と締めくくりました。
【情報源】
国連広報センター
https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/51983/