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ドイツ:持続可能なスポーツ2030ポジションペーパーの改訂

発表日:2025年3月20日

【改訂の背景と方針】
2025年3月18日、ドイツ連邦環境・自然保護・原子力安全・消費者保護省(BMUV)の諮問機関である「環境とスポーツに関する諮問委員会(Beirat Umwelt und Sport)」は、ポジションペーパー『Nachhaltiger Sport 2030(持続可能なスポーツ2030)』の最新版(第4版)を発表しました。
この文書は、スポーツ分野における持続可能性を高める政策的方向性を示すものであり、委員会がこれまでに積み上げてきた議論や、関係機関との対話、実施プロジェクトの成果、さらにEUや国際的な環境政策の最新動向が反映されています。

【自然環境とスポーツの調和的関係の強調】
本改訂では、「スポーツと自然・景観・都市空間」との関係について、特に都市空間におけるスポーツの意義や課題に焦点が当てられており、都市計画や自然保護政策と調和させる観点から、活動誘導(Aktivitätslenkung)やデジタル技術の活用、地域別の課題対応が強調されています。また、EUの生態系回復規則(Ecosystem Restoration Law)や国家生物多様性戦略など、2023年以降の法制度も新たに文書に反映されました。

【持続可能なスポーツイベントを支援するオンラインポータルの開設】
BMUVの支援のもと、新たに「Nachhaltige Sportveranstaltungen(持続可能なスポーツイベント)」というオンラインポータルが開設されました。このポータルでは、スポーツイベントの主催者や関係者が、持続可能性の観点から企画・運営・評価を行うための情報・ツール・チェックリスト・報告ガイドラインなどを利用できます。運営主体はドイツ・スポーツ大学ケルン、ドイツ・オリンピックスポーツ連盟(DOSB)、およびÖko-Institut(エコ研究所)で構成されており、実務者に向けた実践的な支援の拡充が狙いです。

【BNEとスポーツの接続】
新たに「Bildung für nachhaltige Entwicklung(持続可能な開発のための教育、BNE)」が重点分野として位置づけられたことも重要な改訂点です。文書では、スポーツを通じたBNEの推進について以下のような提案がなされています:
● スポーツ団体の定款や活動方針にBNEの視点を組み込むこと
● トレーナーや指導者の養成プログラムにBNE要素を統合すること
● 学校・大学・幼稚園など教育機関との連携を深め、環境教育や社会参加を促進すること
● 青少年が意思決定やクラブ運営に関与する機会を増やすことによって、社会的責任感や持続可能性への理解を高めること
このように、スポーツが単なる身体活動にとどまらず、環境・社会・経済の持続可能性に資する教育として位置づけられています。

【全体構成と今後の展望】
この第4版ポジションペーパーは、合計10の行動分野(Handlungsfelder)から成り、各分野での提案・推奨事項が具体的に記載されています。2023年以降の社会的・法的文脈の変化を踏まえ、実務者・政策立案者・スポーツ団体がそれぞれの立場で行動を起こせるよう構成されています。今後は、これらの提言をふまえて政策支援・財政措置・実践の可視化などが期待されています。

【出典】

ドイツ連邦環境省(BMUV)

【出典リンク】
● 記事本文:
https://www.bmuv.de/meldung/fortschreibung-des-positionspapiers-nachhaltiger-sport-2030
● ポジションペーパー(PDF):
https://www.bmuv.de/fileadmin/Daten_BMU/Download_PDF/Tourismus_Sport/positionspapier_nachhaltiger_sport_2030_2112_bf.pdf