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第6次評価報告書第1作業部会政策決定者向けサマリーの公表
【情報源】
IPCC website
【名称】
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書第1作業部会政策決定者向けサマリーの公表
【形態・形式】
文書(報告書)
【著者・講演者または発行者】
IPCC第1作業部会
【発行/公表時期】
2021年8月9日(月)
【背景・目的】
気候変動に関する科学的知見を整理するための最も信頼のおける機関と考えられるIPCCの第6次評価報告書の第1作業部会報告(気候変動の科学)の報告書が取りまとめられ、政策決定者向けサマリー(Summary for Policy Makers: SPM)がIPCC総会で承認されました。第2作業部会報告(気候変動の影響)及び第3作業部会報告(気候変動対策)は、2022年前半に公表される予定です。
【概要】
本体報告書は、ダウンロードしてみるとA4で4,000ページになる膨大な内容であり、最終的に各国政府に配布された版が公表されていますが、今後SPMの最終化に際して行われた修正等を反映した最終出版物が作成されることになります。気候変動問題は、世界が抱える喫緊の課題ですから、教育関係者も最新の情報を承知することが極めて重要ですが、さすがに報告書を読みこなせる余裕がある先生は限られていると思われるので、研究者から教育者に対して報告書のエッセンスをわかりやすく伝える作業が大変重要になります。今後は、(生物多様性問題と同様に)気候変動問題に関する研究者と教育者の連携を強化し、教育者に対して最新かつ適切なメッセージが送られるようにすることが重要になります。

今回の政策決定者向けサマリー(SPM)のポイントは、Headline Statementによれば以下の通り。要すれば、前回の第5次評価と比べた大きな違いは、気候変動の速度は予想以上に速まり、私たちはより深刻な気候変動の影響を受けることになる点、また、不可逆的に起こった変化は、その後数百年、数千年戻ることはない等の、より深刻な予測結果が得られたことでしょう。

A.気候の現状
・人為的影響により大気、海洋、陸地が温暖化している。
・気候システム全体の最近の変化のスケールは、過去数百年から数千年の間に例を見ないものである。
・人間活動に起因する気候変動は既に世界のあらゆる地域で気象、気候の極端な気象現象に影響を及ぼしている。熱波や集中的豪雨、干ばつ、熱帯性サイクロンなどの極端な気象現象が第5次評価報告書の時より著しくなっている。
・気候プロセスの知識の進展、古気象学の証拠、放射強制力の増加への寄稿システムの応答により、最善の推計では平衡に達する気候のセンシティビティが3℃と推計される。

B.気候の将来
・世界の地表の平均気温は最短でも今世紀中要までは上昇し続ける。CO2及び他の温室効果ガスの著しい削減が今後数十年で行われない限り、1.5℃及び2℃の上昇が21世紀中に起こるだろう。
・気候システムの多くの変化は、直接的な地球温暖化の影響より大きくなるだろう。それらには、極端な熱波の頻度や強度、海水温の上昇、集中的豪雨や干ばつ、熱帯性サイクロンの増加、北極息の海氷や永久凍土の減少が含まれる。
・地球温暖化の進行により、モンスーンによる降雨の激化など、水循環システムが大きな影響を受ける。
・CO2排出量が増加し続けるシナリオでは、海洋や陸地におけるCO2吸収の効率が落ちる。
・過去及び将来にわたる温室効果ガス排出量に起因する変化、特に海洋、氷床及び海面上昇については、数百年から数千年にかけて回復しない。

C.リスクアセスメントと地域の適応に関する気候情報
・自然の力により、人為的な変化は、特にリージョナル・スケール、近未来において、調整されるが、100年単位での地球温暖化への影響は少ない。このような調整機能は、完全な気候変化の予測をする上で重要である。
・地球温暖化の進行に伴い、世界のすべての地域で同時で何回も起こるような気候影響の誘因の変化を数多く経験することになるだろう。いくつかの気候影響の誘因の変化は、1.5℃と比べて2.0℃の時の方が広範な地域でみられるだろう。
・氷床の崩壊、海洋循環の変化、複合的な極端な気象現象、アセスメント結果を大幅に超えるような温暖化などのような、発現確率の低い事象も除外できず、リスクアセスメントの対象とする必要がある。

D.将来の気候変動の制御
・物理科学の観点からは、人為的な地球温暖化を一定レベルまで抑えるためには、CO2の累積量を、少なくともネットゼロに減らし、他の温室効果ガスも著しく減らす必要がある。協力で、急速かつ持続的なメタン排出量の削減も地球温暖化の抑止に効果的であり、さらに、その結果として大気中のエアロゾルを減らし、大気質の改善をもたらす。
・温室効果ガスをわずかにしか、あるいはほとんど排出しないシナリオは、数年のうちに温室効果ガスとエアロゾルの濃度を低減し、大気質を改善するうえで大きな効果をもたらす。世界平均の地表気温の識別できるような大きな変化が、約20年以内に、自然変動の枠中で出現し始める。長期的には、より多くの誘因が関わってくる。

なお、日本を含む東アジアへの主な影響は以下のように予測されている。
・極端な降雨が日常的に起こるようになっている。[高い信頼性]
・頻度、強度ともに著しい降雨が増え、結果的に地滑り等の自然災害が増加する。[高い信頼性]
・東アジア大陸部では干ばつがより頻発するようになっており、中央アジア東部は、より湿った気候に変化している。[中程度の信頼性]
・強い熱帯性サイクロンの強度と発生数の割合が増加している。[中程度の信頼性]
・熱帯性サイクロンは極地方向に向かうようになる。

【対象】
気候変動教育に関心を有する研究者、学校教員
【入手方法・価格】
下記のIPCCウェブサイトからダウンロード可能。
【問合せ先】
IPCC事務局
【関連リンク】
政策決定者向けサマリー(SPM):
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/downloads/report/IPCC_AR6_WGI_SPM.pdf
最終報告書本体:(A4で4,000ページの大部の報告書。今後修正が入る版です)
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/downloads/report/IPCC_AR6_WGI_Full_Report.pdf
よくある質問(FAQ)(これだけでA4で96ページあります。)
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/downloads/faqs/IPCC_AR6_WGI_FAQs.pdf
Regional Factsheet – Asia:
https://www.ipcc.ch/report/ar6/wg1/downloads/factsheets/IPCC_AR6_WGI_Regional_Fact_Sheet_Asia.pdf