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政策提言集「C20 POLICY PACK 2021 」を発表
【情報源】
C20 website/特定非営利活動法人国際協力NGOセンター(JANIC)
【名称】
政策提言集「C20 POLICY PACK 2021 – Building a sustainable future for all」
【形態・形式】
政策提言(報告書)
【著者・講演者または発行者】
Civil 20(C20)
【発行/公表時期】
2021年8月7日
【背景・目的】
Civil 20 (C20)についてご存じでしょうか?世界中の市民社会組織がG20と対話をするためのプラットフォームを提供する組織で、毎年G30と対話をするための政策提言を作成し、G20に合わせて会議を開催しています。
2019年にはG20主催国である日本が主催し、2020年にはサウジアラビアが、今年はイタリアが主催国になっています。今年のC20の政策提言がまとまり、特定非営利活動法人国際協力NGOセンター(JANIC)の堀内 葵さんから以下のとおり紹介が行われています。
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今年のG20サミット首脳会議は10月にイタリアが議長国となって開催されます。
それに先立ち、公式エンゲージメントグループとして市民社会の立場から政策提言を行う「C20(Civil 20)」が、8月7日に政策提言集「C20 POLICY PACK 2021- Building a sustainable future for all」を発表しました。(PDF版:はこちらです。)
今回の政策提言集の作成には550以上の市民社会組織が参加し、C20に設置された9つのワーキンググループによる個別提言を取りまとめ、「すべての人にとっての持続可能な未来を構築する」と題されています。「C20政策提言書2021」には、2030アジェンダ(SDGs)、国際保健、気候・生物多様性・エネルギー転換、地球市民社会教育、反腐敗、デジタル化、ジェンダー、労働、財政の9つのワーキンググループおよびタスクフォースからの提言内容が盛り込まれています。デジタル化ワーキンググループの共同コーディネーターは(アフリカ日本協議会の)稲場雅紀さんが務めています。C20サミットは10月5日から8日まで開催され、現在、セッション企画案の公募がなされています(9月5日締め切り)。
以下、政策提言集の発表に際し、C20からの声明の抄訳です。民主的で参加型の多国間主義を求める声を上げ続け、国連を政策の議論と決定のための正当な場と考えた上で、G20エンゲージメント・グループに提供された機会を利用して、C20はG20との対話構築を追求しています。COVID-19パンデミックが発生してから2年目を迎え、すでに存在している容認できない不平等や不公正を増幅させていることから、C20は世界の状況に対する懸念を表明し、G20諸国が担うべき役割と責任についての政策要求と提言を共有しています。国際的な市民社会は、課題、不平等、暴力、攻撃などがある現在の世界から出発し、すべての人のための持続可能な未来を築くために、市民参加型のプロセスを促進し、ボトムアップのプロセスを通じて提案を発表するために、地域に根ざしたグループやコミュニティと連携しながら、G20に我々の役割を果たすよう要請します。JANIC 堀内 葵
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【概要】
C20による政策提言は、9つのテーマ(2030アジェンダ(SDGs)、国際保健、気候・生物多様性・エネルギー転換、地球市民社会教育、反腐敗、デジタル化、ジェンダー、労働、財政)について行われており、G20の活動を踏まえた市民社会組織からの提言を行っているため、大変示唆に富んでいます。
SDGs、ESDと特に関係が深い「序:全ての人の持続可能な未来の構築」、「2030アジェンダと持続可能な開発」、「気候、生物多様性及びエネルギーの転換」、「地球市民と教育」で示されている課題について概観してみます。■全ての人の持続可能な未来の構築
・私たちの望む世界は、人々が脆弱性やスキルを共有し、満ち足りて尊厳が尊重される生活を送れるような社会である。私たちが望むコミュニティは、強者だけでなく弱者も含まれるような社会である。
・私たちが直面するチャレンジは、不平等、気候変動による地球の危機、暴力、民主主義への攻撃などである。
・私たちが必要とする世界は、全ての人々が尊敬され、権利が守られ、生活を営む活動に積極的に参加することができ、彼らと彼らの社会の福祉のために貢献することが
できる社会である。
■ 2030アジェンダと持続可能な開発
・食糧問題、革新的資金メカニズム、社会保護、中規模都市(intermediary cities:人口5万~100万人の都市)、市民のためのスペースが重要な課題と指摘している。
・2019年には、2018年から1,000万人増えて6億9千万人が飢餓状態であったと言われる。飢餓状態の人は殆どアジアにいるが、アフリカでも急速に増加しつつある。COVID-19により、2020年にはさらに1億3千万人増加すると予測されている。
・社会保護に関しては、COVID-19パンデミックにより社会保護にかける費用が不足している。パンデミック前であっても社会保護に向けられた国際資金は、ODAの1.4%に過ぎなかった。
・2030アジェンダの達成に向けて中規模都市が果たす役割は大きい。中規模都市は、食料と商品のサプライチェーンを通じて地方のアクターが活用できる大きな潜在的経済価値を有している。
・パンデミックと軌を一にしてナショナリズムやポピュリズムが台頭し、自由な市民社会組織による民主的なスペースの脅威になっている。国連のハイレベル政治フォーラムにおいてすら、市民社会組織の参加を制限しようとの提案かなされている。
■ 気候、生物多様性,エネルギーの転換(energy transition)
・地球の健康がG20の意思決定で最優先されるべきであるが、不十分な考慮しかされていない。
・既に最も脆弱な立場の人々は気候変動と生物多様性の喪失により深刻な影響を受けている。
・私たちはかつて例を見ない危機に直面しており、最大規模の多国間協力と国際的な連帯が求められている。
・気候変動対策のコミットメント、気候資金支援、化石燃料への補助金の廃止を含むエネルギー転換、生物多様性保護、海洋の保全、先住民に関する配慮、脆弱性の考慮などが求められる。
■地球市民と教育
・国連SDGsレポートは、以前からSDGs4の達成に向けた進展は遅れ気味であったが、COVID-19パンデミックにより、学校は「世代的な破滅状況(generational catastrophe)」になったと報告。学校の閉鎖は、子供の学びと福祉に大きな悪影響をもたらした。数億人の子供たちが学びに遅れをきたしており、長期にわたる悪影響をもたらすと予想される。1年間のパンデミックにより世界中の3人中2人の子供が学校閉鎖による影響を受けており、最も脆弱な立場の子らは、学校に戻ることができなくなったり、早期結婚や児童労働を強いられたリするリスクにさらされている。
・2020年1年間で1億人の子供や若者が識字教育の機会を失い、その結果、過去20年間に得られた教育の成果が失われようとしている。
・パンデミック前には世界全体で53%の子供が、サブサハラ地域では29%の子供が中等教育を完了していた。学校閉鎖の期間にもよるが、パンデミックは就学を完了する割合大きくスローダウンし、あるいは逆行させるかもしれない。
・76か国のデータによると、2012年から2020年にかけて、10人中7人の3、4歳児は男女の格差を受けていなかった。パンデミックにより、多くの子供たちが幼児教育を受けられなくなっている。
・パンデミック前でも2億5,800万人の子供が学校教育からドロップアウトしていた。女児は1億3,200万人であった。およそ半分の国でしか、小学校において女児が男児と同じ扱いを受けていない。中等教育になると、不平等は著しく増加し、3分の2の国で中学校での不平等が、4分の3の国で高校での不平等がみられる。このように、C20の提言は世界が抱える主要な課題について、現状、G20の取組について詳細に分析し、市民社会からの改善提案を行っています。関心のある方は、ぜひご自分の関心分野の報告についてご一読いただくと良いと思います。
【対象】
地球規模の課題に関心を有する政府職員(国、地方)、企業関係者、研究者、教員
【入手方法・価格】
【問合せ先】
C20事務局(イタリア):https://civil-20.org/contact-us/
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