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気候変動と健康に関する特別報告書「気候行動に関する健康論」
【情報源】
WHO Website
【名称】
気候変動と健康に関する特別報告書「気候行動に関する健康論」
(COP26 Special Report on Climate Change and Health: The Health Argument for Climate Action)
【形態・形式】
報告書
【著者・講演者または発行者】
World Health Organization (WHO)
【発行/公表時期】
2021年10月11日
【背景・目的】
10月11日に世界保健機関(WHO)は、気候変動枠組条約COP26に向けて、気候変動と健康に関する特別報告書:「気候行動に向けた健康論」を公表しました。この報告書は、様々な分野における気候変動への取り組みの健康上の利益を最大化し、気候危機の最悪の健康影響を回避する方策として、10の勧告を行っています。
【概要】
 ●要旨
10月11日に世界保健機関(WHO)は、気候変動と健康に関する特別報告書:「気候行動に向けた健康論」を公表しました。この報告書は、様々な分野における気候変動への取り組みの健康上の利益を最大化し、気候危機の最悪の健康影響を回避する方策として、10の勧告を行っています。この報告書は、世界の保健労働力の3分の2以上(世界中で少なくとも4,500万人の医師と医療従事者を代表する300の組織)が署名した公開書簡とともに公表され、国家の指導者とCOP26代表団に気候行動を強化するよう求めています。
 ●報告書と公開書簡のポイント
公開書簡では、「私たちがケアを提供する場所はどこででも、世界中の病院、診療所、地域社会で、私たちはすでに気候変動によって引き起こされる健康上の被害に対応しています」と、つづられています。COP26の各国の指導者とその代表者に対し、地球温暖化を1.5°Cに制限することで差し迫った健康被害を回避し、気候変動の緩和と適応行動の中心に人間の健康と公平性を位置づけるよう求めています。報告書及び公開書簡では、前例のない極端な気象現象やその他の気候への影響が、人々の生活と健康への被害を増大していると警告しています。熱波、台風、洪水などの極端な気象現象がますます頻繁に発生し、何千人もの人々が死亡し、何百万人もの命が影響を受け、医療システムや施設が最も必要なときに昨日できなくなる恐れがあります。天候や気候の変化は食料安全保障を脅かし、マラリアなどの食料、水、ベクター媒介性疾患のリスクを増大させるほか、気候への影響はメンタルヘルスにも悪影響を及ぼします。一方、大気汚染は、主に気候変動を引き起こす化石燃料の燃焼の結果、世界中で毎分13人の死亡を引き起こしています。大気汚染をWHOのガイドラインレベルに引き下げることにより、大気汚染による世界の死者の総数を80%削減すると同時に気候変動を促進する温室効果ガスの排出量を劇的に削減することになります。報告書は、人々の健康を守るためには、エネルギー、輸送、自然、食糧システム、金融を含むすべての分野で革新的な行動が必要であると結論しています。野心的な気候行動を実施することにより、コストをはるかに上回る公衆衛生上の利益が生ずることを明らかにしています。パリ協定の目標達成は、大気質、食事、身体活動の改善などにより、毎年何百万人もの命を救うことになりますが、現時点では、ほとんどの気候意思決定プロセスでは、これらの健康に関する利益とその経済的評価が考慮されていないと指摘しています。
 ●気候と健康に関する10の勧告
1.COVID-19からの健康でグリーンな回復にコミットしてください。
2.私たちの健康については交渉の余地がありません。国連気候交渉の中核に健康と社会正義とを位置づけてください。
3.気候行動による健康上の利点を明確にする必要があります。
4.気候リスクに対する健康問題の回復力(レジリエンス)を高める必要があります。気候に対する耐性と環境に優しい医療システム、施設を構築し、健康適応と回復力を支援する必要があります。
5.気候と健康問題を守り、改善するようなエネルギーシステムを作る必要があります。再生可能エネルギーへの正当かつ包括的な移行を促進し、大気汚染、特に石炭燃焼をなくし、家庭や医療施設のエネルギー不足を終わらせることが求められています。
6.都市環境、交通、モビリティを再考する必要があります。土地利用の改善、緑と水に満ちた公共スペースへのアクセス、ウォーキング、サイクリング、公共交通機関を優先する、持続可能で健康的な都市設計と交通システムを促進してください。
7.私たちの健康の基盤として自然を保護し、復元してください。自然システム、健康な生活、持続可能な食糧システム、生活の基盤を保護し、回復することが大切です。
8.健康で持続可能で、かつ回復力のある食糧システムの構築を促進してください。持続可能で柔軟性がある食糧生産を促進し、気候と健康の両方の成果を提供する、手頃な価格で栄養価の高い食事を提供するようにしてください。
9.生命を救うために、より健康的、公正で環境に優しい未来に向けた資金提供を行ってください。
10.保健コミュニティの声に耳を傾け、緊急の気候行動を行ってください。
 ●公開書簡
世界中の保健コミュニティ(少なくとも4,500万人の医師と医療専門家を代表する300の組織)は、国家の指導者とCOP26の代表団に概略以下の内容からなる公開書簡を送り、気候危機に対処するための行動を求めます。
  • 私たちは、すべての国に対し、温暖化を1.5°Cに抑えるという公正な目的を果たすために、パリ協定に基づく国家気候コミットメントを更新・強化するよう求めます。それらの計画には、健康を確保するための措置が含まれる必要があります。
  • 私たちは、すべての国に対し、化石燃料に対するすべての関連許可、補助金及び資金供与を直ちに削減することから始め、現在の資金をクリーンエネルギーの開発に完全にシフトすること、化石燃料からの迅速かつ明確な移行を進めるよう求めます。
  • 私たちは、高所得国に対し、1.5°Cという目標に沿って温室効果ガス排出量をより大きく削減するよう求めます。
  • 私たちは、高所得国に対し、必要な緩和及び適応措置の達成を支援するために、低所得者国への資金の移転を約束するよう求めます。
  • 私たちは、各国政府に対し、気候に強く、低炭素で持続可能な保健システムを構築するよう求めます。
  • 私たちは、各国政府に対し、COVID-19パンデミックからの回復投資が気候行動を支援し、社会的不公正、健康上の不公正等を確実に減らすよう求めます。
【対象】
気候変動問題と健康について関心を有するすべての者
【入手方法・価格】
↓以下のURLからダウンロード可能
https://www.who.int/publications/i/item/cop26-special-report
【問合せ先】
WHO Team on Climate Change and Health, Environment, Climate Change and Health
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