- 北米
- 国連機関等
- 会議
2015 年 6 月、国連総会は「国連海洋法条約(UNCLOS)の下に、国家の管轄権を超える 区域の海洋生物多様性(marine biological diversity of areas beyond national jurisdiction; BBNJ) の保全及び持続可能な利用に関する新しい法的拘束力ある文書(BBNJ 条約)を作成するこ と」を決定した(A/RES/69/292)。
「国家の管轄権を超える区域(国家管轄権外区域)」とは文字どおり、いずれの国家も主 権や主権的権利を行使できない場所であり、公海や深海底のことを指す。そのよう な物理的アクセスが困難な区域の生物多様性の実態については未だ十分に把握されていないが、近年の海洋の科学的調査の結果、公海や深海底においても多種多様な生 物が生息していることが判明している。それらの地域に生息する「極限環境生物」、特に微生物の遺伝資源としての産業や医薬品への応用に注目が集まっており、条約交渉が始められた。
2023年2月20日から3月3日にかけてBBNJに関する第5回政府間会合(国家管轄権の及ばない地域の海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する国際海洋法条約に基づく国際法的拘束力のある文書に関する政府間会合)再開会合がニューヨークで開かれ、最終的に新条約のテキストが合意され、シンガポールのレナ・リー議長は、「船は岸に到着した」と発表した。
BBNJ条約は、排他的経済水域や大陸棚を超えた海洋の生物多様性の保全と持続可能な利用に関する国際法制度を強化するための条約で、海洋遺伝資源へのアクセスと使用を対象としている。国の管轄権を超えた海域における保全及び持続可能な利用措置の採用並びに環境影響評価の実施能力開発と海洋技術の移転について規定している。