ホーム > 海外の動き > 【報告書】気候変動グローバルストックテイク
  • 国連機関等
  • その他
【報告書】気候変動グローバルストックテイク
【情報源】
UNEP
【名称】
【報告書】気候変動グローバルストックテイク
【形態・形式】
報告書(文書)
【著者・講演者または発行者】
気候変動枠組条約事務局
【発行/公表時期】
2023年9月8日
【背景・目的】
グローバルストックテイクは、パリ協定によって実施が規定されている、気候危機に対する世界の世界的な対応を評価し、より良い道筋を描くための重要な手段です。
【概要】

気候変動枠組条約(UNFCCC)COP28で、グローバルストックテイクに関する決定を下すのに役立つように設計された新しい統合報告書が、国連気候変動枠組条約事務局によって2023年9月8日に公表されました。この報告書は、そのような決定を構成する可能性のある主要な要素に関する各国政府の見解を反映しています。

グローバルストックテイクはパリ協定の一部であり、気候危機に対する世界の世界的な対応を評価し、より良い道筋を描くための重要な手段です。第1回グローバルストックテイクの技術的対話に関する本報告書は、そのプロセスを通じて寄せられたインプッ トと、3回の各ストックテイクで行われた議論に基づいています。パリ協定の実施におけるギャップを埋め、課題や障壁に対処するための更なる行動のカギとなる主要な分野を特定しています。パリ協定の目的と長期目標の達成に向けた総体的な進捗状況の評価を提供し 、締約国に対し、自らの行動や支援を更新し、強化するための潜在的な分野について情報を提供します。また、気候変動対策のための国際協力を強化するための潜在的な分野について締約国に情報を提供します。
パリ協定の目標をどのように達成するかについては意見が分かれていますが、各国政府は、過去の気候変動対策は不十分であり、地球温暖化を1.5℃に抑え、損失や被害を回避するためには、すべての締約国によるさらなる行動と気候変動への適応、開発途上国への支援が必要であるとの幅広い合意を表明しています。
国連気候変動枠組条約事務局のサイモン・スティール事務局長は、「この報告書は、(ゲームの)カードをテーブルに置きます。私たちは、国際社会としてパリ協定の長期目標の達成に向けて順調に進んでおらず、住みやすく持続可能な未来を確保するための機会の窓が急速に閉じつつあることを知っています。この報告書は、締約国自身の言葉に基づいて、グローバルストックテイクの最終結果がどのようになり得るかを示す青写真です。各国は、この重要な10年間の行動に向けた野心的な成果のためのコンセンサスを構築するために、インプットを最大限に活用する必要があります。」と述べています。
COP28議長に指名されたスルタン・アル・ジャーベル博士は、「報告書は、世界が軌道から外れていることを再び示しています。COP28は、すべての締約国が集まり、実行可能な解決策をテーブルに置く瞬間です。我々は、課題に取り組み、2030年までに必要な排出量を削減し、世界の強靭性を強化し、公正かつ公平な移行を可能にするために必要な規模で資金を動員するための真の答えを用意しなければなりません。今こそ、グローバルストックテイクで団結し、行動し、交渉による強力な成果をもたらす時です。」と述べています。
グローバルストックテイク報告には、気候変動に対する実行可能な解決策が詳細に説明されており、実装の準備ができています。この報告書の主要なメッセージは、以下の通りだと考えられます。
・1.5℃目標の達成には更なる多大な努力が必要である。
・そのための、2030年43%削減に向けた技術は既にあるものの、その社会的実装が必要である。
・1.5℃達成に向けた窓はまだ開かれているが、急速に狭まりつつある。緊急な行動が求められている。

【参考】グローバルストックテイク報告書に示された17のカギとなる見解
  1. パリ協定は、目標を設定し、気候危機への対応の緊急性に関するシグナルを世界に送ることで、ほぼ普遍的な気候変動対策を推進している。行動は進展しているが、あらゆる面で更なる行動が必要である。
  2. 持続可能な開発と貧困撲滅に向けた努力の中で、気候変動の脅威に対する世界の対応として、各国政府は気候変動へのレジリエンスと低GHG排出の開発を主流とするシステムの変革を支援する必要がある。また、システム変革の努力を強化するためには、締約国以外の利害関係者による信頼でき、説明責任を果たし、透明性のある行動が必要である。
  3. システムの変革は多くの機会をもたらすが、急激な変化は破壊的なものでもある。包摂と公平性に焦点を当てることで、気候変動対策と支援における野心を高めることができる。
  4. 世界の排出量は、パリ協定の気温目標に合致したモデル化された世界の緩和経路に沿っていない。温暖化を産業革命以前の水準から1.5℃上昇に抑えるために野心を高め、既存の約束を実行に移す余地は急速に狭まっている。
  5. 世界の温室効果ガス(GHG)排出量を2019年レベルと比べて2030年までに43%削減、2035年までに60%削減し、2050年までにCo2排出量をネットゼロにするためには、国内緩和策の実施と各国の約束(Nationally determined commitment: NDC)における目標設定に関し、より多くの野心的な行動と支援が必要である。
  6. CO2とGHGのネットゼロ排出を達成するには、再生可能エネルギーの拡大など、すべてのセクターと文脈にわたるシステムの変革が必要である。再生可能エネルギーの拡大、すべての化石燃料の廃止、森林伐採の廃止、CO2以外の排出量の削減などである。その中には、供給側と需要側の両方の対策が含まれる。
  7. 公正な移行は、さまざまな文脈に対応する、状況に応じたアプローチを採用することで、より強固で公平な緩和を支援することができる。
  8. 経済的多様化は、対応策の影響に対処するための重要な戦略であり、さまざまな文脈で適用できるさまざまな選択肢がある。
  9. 気候変動が世界中のすべての国や地域社会、そして人々を脅かしている。特に、変化への備えが最も不十分で、最も災害からの回復能力が低い人々にとって、気候変動がもたらす影響を軽減し、それに対応することが緊急に求められている。
  10. 全体として、適応行動と支援に関する計画やコミットメントにおける意欲は高まっている。しかし、現在の適応への取り組みのほとんどは、断片的、漸進的、部門別、地域間の不均等な分布にとどまっている。
  11. 適応が現地の状況や住民、優先事項から情報を得て推進されるものであれば、適応行動と支援の妥当性と有効性の両方が向上し、変革的な適応を促進することができる。
  12. 損失と損害を回避し、最小限に抑え、対処するには、リスクを包括的に管理し、影響を受けるコミュニティへの支援を提供するための、気候政策と開発政策にまたがる緊急の取り組みが必要である。
  13. 適応のための支援、損失と損害を最小化し、対処するための資金のアレンジを、革新的な資金源を仁族に拡大し、活用する必要がある。また、緊急かつ増大するニーズに対応するため、資金の流れを気候変動に強い開発と整合的な資金の流れにする必要がある。
  14. 途上国における気候変動対策への支援を拡大するには、国際的な公的資金を戦略的に活用する必要がある。国際的な公的資金は、アクセス、オーナーシップ、影響を含む実効性を高めるための主要な手段であり続ける。
  15. 国際的、国内的、公的、私的を問わず、金融の流れを低GHG排出と気候変動に強い開発に向けた道筋と整合性を持たせるためには、何兆ドルもの資金を提供し、気候変動に強い開発にシフトする機会を創出する必要がある。
  16. 開発途上国のニーズを支援するためには、既存のクリーン技術を迅速に導入するとともに、新技術の革新、開発、移転を加速させる必要がある。
  17. キャパシティ・ビルディングは、広範かつ持続的な気候変動対策を達成するための基盤であり、あらゆるレベルで長期にわたって能力が強化され、維持されるためには、国主導かつニーズに基づく効果的な協力が必要である。
【対象】
気候変動に関心を有する全ての者
【入手方法・価格】
以下のURLからダウンロード可能。
https://unfccc.int/sites/default/files/resource/sb2023_09_adv.pdf
【問合せ先】
UNFCCC事務局