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アメリカ:NCSEによる『Climate Change Education』書評

発表日2025年4月15日

出典:National Center for Science Education(NCSE)


 

【レビューの背景と目的】
本記事は、Columbia UniversityのLuo Cassie Xu氏とRadhika Iyengar氏による書籍『ClimateChange Education: A Primer for Sustainability』(2024年刊行)に関する書評です。科学的知見と教育実践の橋渡しを意図した本書に対し、米国の科学教育団体NCSEが、その教育的価値と社会的意義を評価しています。

【肯定的評価と主な論点】
レビューでは、本書が気候変動教育を学校・地域・制度といった多様な文脈で実践可能なものとして描いている点を高く評価しています。特に、歴史・文化・政策・科学・経済を横断的に捉える「システム思考」や、感情的なつながりと社会情動的学習(SEL)を重視した教育観は、単なる知識伝達にとどまらない実践的手法として肯定的に紹介されています。
また、恐怖を煽るアプローチを避け、具体的かつ行動志向の教育を通じて変化を促すべきであるという著者の姿勢に対し、現代の教育課題との整合性をもって評価されています。

【ESDとの連動と制度的広がり】
NCSEは、本書が国連の「持続可能な開発のための教育(ESD)」を理論的枠組みとして活用し、カリキュラムや学校運営、教員研修、学生のリーダーシップ育成までを含む包括的な教育の方向性を提示している点にも注目しています。

Next Generation Science Standards(との整合性や、教育格差と包摂性への配慮も、本書の重要な特徴として紹介されています。

【教育手法と事例の実用性】
プロジェクトベース学習(PBL)、協働学習、探究学習、サービスラーニングといった教育手法が、現実の社会課題と教育を接続する有効な方法として取り上げられています。アイルランド・ダブリンの「Creating Futures」モジュールや、米国ニュージャージー州の政策例を通じて、学際的かつ実践的な教育が実現可能であることが強調されています。

【社会的・環境的正義の視点】
NCSEは、著者らが気候変動教育において「気候正義(climate justice)」を重視し、教育制度が社会的不平等と環境問題の双方に応えるべきであるという立場をとっている点にも注目しています。特に、周縁化された人々を含めた包括的な教育設計の必要性が繰り返し強調されています。

【総合的評価と意義】
レビュー全体を通じて、本書は教育者・政策立案者・教育研究者にとって有用であり、ColumbiaClimate Schoolの先進的な取り組みと連動しながら、教育現場への導入を後押しする一冊として肯定的に評価されています。多様な教育段階への適用可能性と、学術と実社会との橋渡しという点で、本書は現代的な意義を持つとされています。


出典リンク:
https://ncse.ngo/review-climate-change-education-earth-institute-sustainability-primer