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スウェーデンにおける幼児期のSDおよびESD

[執筆者]浅野 由子
(スウェーデン ウプサラ市私立マルマ・バッケ就学前学校)

 
 スウェーデンにおけるSD(持続可能な開発)およびESD(持続可能な開発の為の教育)についての記事を担当させていただきます、日本女子大学学術研究員の浅野由子と申します。この度は、スウェーデンの勤務先(ウプサラ市私立マルマ・バッケ就学前学校)におけるSDやESDの活動の概要について、ご紹介したいと思います。
 
 まず、ウプサラ市の説明ですが、スウェーデン首都ストックホルムから北東に60km程に位置する大学都市(約20万人)です。世界の動植物の分類と命名をした生物学者カール・ヴォン・リンネ(1707〜1778)に所縁のある都市で、1447年創立のウプサラ大学を中心に、バイキングの古墳のあるガムラ・ウプサラ等、歴史や文化のある都市として知られています。また、ウプサラ市は、今年(2018年)WWF(世界自然保護基金)のOne Planet City Challenge 2018というコンテストで、世界で一番環境(気候)に優しいまちづくりに貢献している都市に選ばれ、SDGs(持続可能開発目標)にも力を入れています。特に、ウプサラ市がまちづくりに力を入れている項目は、8つあります。1)中立的な熱を使用する。(焼却炉の全面廃棄を目標)2)効率的なエネルギーを使用3)太陽エネルギーの促進、4)有毒物質(プラスチック)を減らす。5)公共交通や自転車の促進、6)有機野菜の促進7)グリーンなビジネスの啓蒙8)緑の建築物の建設です。こうした街づくりは、ウプサラ市のESDに大きく関連しています。
 
 私の勤務する就学前学校では、このウプサラ市の街づくりおよび人づくりの基礎を担う機関として、毎日の生活を送っています。具体的にどのような保育・教育活動を行っているのか、簡単にご紹介したいと思います。まず学校の立地ですが、団地の一階を就学前学校として使用しており、周りは、ウプサラ市の自然保護地区となっている森林地域に囲まれた自然豊かな場所にあります。職員は、社長(兼園長)含め7名(太陽組3名、月組3名)、子ども各クラス16名(縦割り1歳~5歳)計32名のスウェーデンでは中規模の就学前学校です。スウェーデンは、日本でいう年長の半年と小学1年生の半年の計1年間を、就学前学級という基礎学校(日本の小学校)に併設されている学級に入り、遊びを基本に、文字・数にも慣れる学校環境が整備されています。
 
 SDGsやESDに関連する就学前学校で行われている活動内容ですが、基本的に一日少なくとも2回(午前・午後)は、野外活動を推進し、昼食には、「Happy Food(ハッピーフード)」という特に野菜を中心とした有機食品を提供、「Gen pep(ジム・ペップ)」という団体(スウェーデンの王女夫妻が推奨)の、幼児期からの運動環境を促進する活動に賛同し、近年の外遊びの減少で問題視されている子どもの健康問題を危惧し、子ども達が日々の生活から楽しく運動出来る環境作りをしています。基本的には、子どもの安心・安全を保障しながら、質の高い保育・教育環境を用意しています。特に、スウェーデンは今世紀から、以前の幼稚園・保育園が、学校法に統一され、就学前学校(Förskola)という名称となり、保育のみならず、教育活動も重視し、EDUCARE(エデュケア)の進んでいる国としても知られています。
 テーマ学習を基本とした「教育学的ドキュメンテーション」(保育や教育活動を記録し、振り返ること)が取り入れられており、国のナショナル・カリキュラム(Lpfö 2017)の理念と目標を基本としながら、具体的な活動は、我々の自由裁量で決めています。今学期は、ウプサラ市を背景に書かれた絵本「Pelle Svanslöss(尻尾のないペレ)」を題材に、テーマ学習が行われました。年長組(5・6歳)は、森林での絵本の読み聞かせの内容について話し合う機会を設けた後、ペレの友達を描写し、ペレを題材にした市内の公園や歴史的建造物を見学に行き、その後、協力して、ウプサラ市の模型を作りました。
写真3枚目
年中組(3・4歳)は、子ども達が想像したペレの友達、恐竜のマックスを協力して描写した後、ペレとマックスに近所の公園を紹介して、公園の模型を作りました。
写真1枚目
更に、年小組(1・2歳)は、ペレの生まれた田舎の農家を散歩しながら、動物に触れ合い、自然物(木の葉や実)を採取し、手足を利用して、動物を描写し、ペレの生まれた農家の再現することになりました。
写真2枚目
このような活動を通して、子ども達がどういった能力を身につけているかについて、職員が計画、記録、省察、評価する過程を通して、子どもの学びを支えています。
 
 就学前学校に勤務して約2年半となりますが、子ども達はじめ職員や保護者と過ごす毎日は、スウェーデン社会のSDやESDを学ぶ上で、貴重な経験です。何故なら、スウェーデン社会が目指す持続可能な街づくり(SDやSDGs)の中で、如何にE(ducation)が大切にされているかを体験し理解することが出来るからです。ウプサラ市では、S(ustainability)を目指す上で、環境・経済・社会のバランスの取れた政策改革と同時に、未来に生きる人間(特に、若者や子ども)の教育(Education)をその中心に置くことを最優先しているのです。高福祉高負担のスウェーデンは、高等教育まで教育費が無償であることは知られていますが、そこで投げかけられる質の高い学びとは何か、を考える時、それは、未来を生きる我々が、この地球上に生きていく上で必要な学びとは、幼児期からの民主主義、男女平等、自然保護、障害者福祉、国際・多文化理解といった、人間にとって生きていく上で必要不可欠であることにあることを教えてくれるのです。