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エクアドルにおける環境教育について

[執筆者]山下 祐史
(多摩市立多摩第一小学校/青年海外協力隊エクアドル派遣)

 
 私は現在、青年海外協力隊の現職教員特別参加制度を使ってエクアドルの中部にあるカニャール市で活動を行っている。エクアドルと日本は2018年に国交100周年を迎えた。日本国内・エクアドル国内共において昨年、様々な交流が行われ今後より一層関係を深めていくよい機会となっていた。
 さて、そんなエクアドルですが、どのような印象をおもちでしょうか?バナナでしょうか?コーヒーでしょうか?赤道でしょうか?ご存知の方も多いかもしれないが世界遺産第一号に登録され、ダーウィンが進化論を着想したガラパゴス諸島もエクアドルの領土である。
 また、東部には手つかずの自然が多く残されたアマゾン地方、中央には6000mを越える山々が鎮座するアンデス山脈、西部にはフンボルト海流が流れる太平洋があり、地球上で最も多様な動植物が存在する大自然保有国として知られている。今回は、そんな自然の宝庫・エクアドルではどのようにESDに取り組んでいるか紹介していきたいと思う。
 まず始めに配属されている機関について紹介する。配属先はカニャール市を中心に、近隣の4市が共同出資して設立したごみ処理、地域清掃、環境保全啓発等の環境に関わる事業を一手に担うカニャール地域総合衛生公社というところである。私の主な活動は、地域内の学校で環境教育を行ったり、住民に向けてごみの分別や3Rの啓発を行ったりしている。地域住民の環境意識はあまり高くなく、ごみのポイ捨てや放置が常態化している。意識が高くない背景として考えられるのは、税金の中に、ごみ処理に対して支払っているものが含まれており、「お金を払っているから自分達は関係ない。」という考えがあるからだ。また、これはエクアドル全土にいえることだが、ごみ処理などのブラウン系の仕事に従事している人に対しての社会的身分があまり高くなく、仕事を与えてあげているという考えをもっている人もいる。これを改善し、一人一人が当事者意識をもって環境に配慮した生活をしていくようにするのが私に課せられたミッションである。
 次に、エクアドルにおけるESDへの取り組みについて紹介していく。
 エクアドルには日本のように教育省が発行している学習指導要領がある。そこに定められている教科の一つに「Proyectos escolares」というものがある。この教科では、「自然科学と社会科学を軸に据え、年間を通じて児童・生徒・学生の興味関心のあることを基に教科横断的に創造性をもって知識を出し合い、協力して何かを成し遂げることを目的とする。i」とされている。記載されている内容を読んでいくと、総合的な学習の時間の学習指導要領と遜色ないほど考え込まれている。ii
 実際に小学校における活動を見ると、児童が育てたい植物を家から持参し協働して育て、市場で売るということをしていた。一見するとESDに取り組んでいるように思えるが、ルーティンワーク化されており、めあてを定めていないので、児童も何のために行っているのか不明瞭なまま活動をしており、深い学びにはなっていない。
 もし仮に「Proyectos escolares」という教科の目的が児童の中に浸透していれば道にお菓子の包み紙をポイ捨てしたり、分別せずにごみを捨てたりすることがなくなるはずだ。植物を育てて売るという過程の中に水質改善、土壌改良、大気汚染といった地球規模の問題に繋げて考えることのできるエッセンスが潜んでいることに児童・生徒はもちろんのこと教職員も気付いていないのかもしれない。
 また、教師主導型の教え込みの授業が中心で児童はホワイトボードに書いてあることをそのまま書き写すのみのことが多く、主体的な学びになっていない。
 これらの現状を基に活動地域内の学校で教職員向けにアクティブラーニングの視点と兼ねてESDについて紹介した。約2年間という活動期間の中でどこまで変化をもたらすことができるかわからないが、継続して児童・生徒が主体的・協働的な学びができるよう働きかけていきたい。世界一の生物多様性と大自然保有するエクアドルが今後も続いていくことを願って…。
 
課題解決に向けたプロセスの表

学校でProyectoに取り組んでいる様子


 
i Ministerio de Educación del Ecuador(2016) [CURRÍCULO DE LOS NIVELES DE EDUCACIÓN OBLIGATORIA] p.30より山下が翻訳
ii Ministerio de Educación del Ecuador(2018) [Proyectos Escolares Dirección Nacional de Mejoramiento Pedagógico]