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ドイツでの日常生活の中で気付くESD

【海外通信員レポート:ドイツ】
 
[執筆者]菅原 珠美
(四国地方ESD活動支援センター 非常勤スタッフ(ドイツ在住))

 
ドイツ西部にあるトリアーという街に住み始めて約1ヶ月が経ちました。四国ESD活動支援センターのスタッフとして、四国を離れた今でも業務の一部を担っています。
縁あって住むことになったトリアーという街は、ドイツ最古の都市として主にヨーロッパ人観光客が多く訪れ、現存している古代ローマ時代の遺跡群をはじめ、多くがユネスコ世界遺産に登録されています。日常生活の中で、ESDの視点で気づいたことや取り組みについて、いくつかご紹介します。
 
認証マーク
スーパーやお店を歩いていると、日本では見かけないような、さまざまなマークが商品に付いていることに気づきます。フェアトレードやオーガニックに関する認証は日本でも多く見かけますが、珍しく感じたのは「demeter」という認証マークです。これはドイツで最も古い民間のオーガニック認証機関が、有機栽培だけでなくバイオダイナミック農法(※1)で作られた製品を認証しており、各国のオーガニック基準に比べ厳しいものとなっているようです。(※1:天体の動きに合わせて農作業を行うなど自然のリズムを尊重した農法)

写真1_demeterマーク
フェイスクリームに表示されている「demeter」認証マーク

 
他にも、ビーガンやハラール認証など、体質や多様な考え方に配慮するマークが積極的に使われており、食品だけでなく化粧品やシャンプーなどの日用品にも付いています。さまざまな価値観や体質の人が、自分に合った商品を選択しやすい環境が整っていることには、感心させられます。私自身、マークのことを調べ、発見することを通して、これまで知らなかった多様性や視点に気づくことができました。
 
レジ袋
日本では、スーパーで買い物をすると、レジ袋の無料配布や購入がまだまだ一般的ですが、ドイツではそのまま商品を手渡されます。もし、袋が必要な場合は、オーガニックコットンや紙などで作られたショッピングバッグ(プラスチック製もあります)を購入するか、持参した袋で持ち帰ることが地方のスーパーでも当たり前に受け入れられています。野菜や果物も量り売りが多く、ビニール製の袋を使わない選択をすることもできます。ドイツでしばらく暮らした後に日本へ帰ると、あまりの過剰包装に改めて驚き、行く先々で包装を断ることに疲弊したこともありました。
 
日本では、2018年10月に環境省よりレジ袋有料化を進める対策の素案が示されたところですが、ドイツでは2016年2月からビニール袋の有料化が徹底されており、ある大手スーパーは将来的にビニール製のレジ袋を廃止する決定をしています。スーパー以外の小売店でも同様で、余計な包装をしないことが普通になっています。

写真2_エコバック
とあるスーパーのエコバックは、フェアトレードの重要性を訴えます。

 
 
デポジット制によるリユース・リサイクル
スーパーなどで売っているリサイクルマークが付いているペットボトルや瓶などの容器は、購入時に容器の保証金を一緒に支払い、その容器を回収機へ返却することで保証金が返金される制度があります。
 
保証金は、スーパーのレジで返金または会計から値引きをしてもらうことができますが、大きめのペットボトルだと1本約25ユーロセント(約31円:1ユーロ125円計算)と結構高めの金額設定のため、ほとんどの人が返却します。土曜日だと回収機に列が並ぶほどで、この制度が地域の人々にしっかり浸透していることが分かります。
 
2003年より始まったこの制度は、当初はワンウェイ容器(ごみまたは資源として回収される)にデポジットを課すことでリターナブル容器の利用促進を目指すことや、散乱ごみの解消等を目的としていました。その結果、散乱容器は減少したものの、ビール瓶以外のリターナブル容器の回収率は低い状況のようです。リターナブル容器への理解促進や観光等で訪れた人への説明など課題はありそうですが、資源循環へ関心を持つきっかけにはなっています。

写真3_リサイクルマーク
ペットボトルのリサイクルマーク

 

写真4_ペットボトルを回収機へ返却している様子
スーパーに設置されたデポジットの機械

 
 
ドイツに住んでみて
環境先進国として素晴らしいと思う反面、気になるのは、街中での吸殻やごみのポイ捨てです。分煙に関して日本は進んでいますが、ドイツでは屋内は原則禁煙であるものの明確な喫煙所は少なく、基本的に外は自由に喫煙できるため、道端に吸殻が多く落ちていることがあります。清掃の方が綺麗にしてくれてはいますが、捨てられたままの吸殻が自然環境や私たちにどんな影響を与えるのか、ESDの視点がより必要と感じます。
 
ドイツでは、良い面も疑問に感じる面も多々ありますが、他国の取り組みを知ることは、自国やこれまでの生活の現状を客観的に考えるきっかけにつながり、自分は何を選択するかを問い直す機会になっています。
来独する前、ほとんどの人が環境保全や社会に対しての意識が高いと思っていましたが、そうではない人々もいる中、盛んな市民運動と国や企業の率先した取り組みが、社会を動かす原動力になっており、日本も学ぶことがあるように思います。