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世界銀行におけるSustainable Developmentへの取り組み

【海外通信員レポート:アメリカ合衆国】
 
[執筆者]島野 敏行
(世界銀行グループ日本理事室・理事補)

 
世界銀行とは
世界銀行は、第二次世界大戦後の世界経済の安定と復興・開発の促進を目的に創設された国際復興開発銀行(IBRD)や、低所得国向け支援のために創設された国際開発協会(IDA)の2つの機関を総称した呼び名です。世界銀行以外にも民間セクターへの投融資を通じ開発途上国の開発課題解決を促進する国際金融公社(IFC)など複数の機関が存在し、全体を総称して世界銀行グループと呼びます。世界銀行の活動や詳細については、年次報告書を参照願います(https://www.worldbank.org/ja/country/japan/publication/annual-report

世界銀行概観

世界銀行は、①極度の貧困の撲滅(1日1.9ドル未満で暮らす人々の割合を2030年までに3%以下に減らす)、②繁栄の共有の促進(各国の所得の下位40%の人々の所得を引き上げる)、の2大目標を2030年までに達成することを掲げています。
これらの目標を達成するために、世界銀行では開発途上国に対し低利融資や無利子融資、贈与を通じて、インフラ整備、保健や教育、農業、環境対策、民間セクター開発、ガバナンスの強化、など様々な課題を横断的にカバーし、包摂的かつ持続的な開発が実施出来るよう協力しています。
 
世界銀行と持続可能な開発
現在、世界の貧困率は過去最低水準まで改善しました。しかし、貧困の撲滅や繁栄の共有を達成する勢いは失われつつあり、特に、サブサハラ・アフリカ地域では貧困率が依然として高く、上昇傾向もみられます。これらの要因は、マクロ経済の厳しい展望、財政負担、自然災害の増加、最貧困層の所得の鈍い伸び、過去最高水準にある難民の数、紛争や脆弱性の継続など様々です。加えて、貿易障壁や主要国の景気後退などダウンサイド・リスクも増幅してます。
 
このような中で、途上国が苦労して達成した成長を維持・加速化できるよう世界銀行はどのような協力を行うべきでしょうか。出資国である日本は、①債務持続可能性強化のための借入人の能力構築支援、②持続可能な成長と開発のための質の高いインフラ投資推進、③人的資本形成の基盤となるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に不可欠な強固な保健財政制度の構築、④自然災害への強靭性強化、を重点とし、今後も増え続ける困難な世界的諸課題に対処し、強固で持続可能かつ均衡ある包摂的な成長や貧困削減の実現に寄与する協力を世界銀行に求めています。
 
世界銀行の強みは、グローバルな経験、幅広いセクターにわたる豊富な知識、主要ステークホルダーの動員力です。それらを通じ総合的な解決策を途上国に提供すべく、例えば、安全かつ定時制の高い輸送機関への女性・女児のアクセス確保、気候変動の影響に耐えられる強靭なインフラの構築、脆弱性・紛争・暴力の影響下にある地域の保健システム向上等、途上国だけでは難しい諸課題への対応を促進しています。世界が複雑さを増し、相互に結びついていく中で、途上国自身でそれぞれの開発課題に対する持続可能な解決策を見いだせるよう、筆者も上述の日本の重点4分野を意識しつつ、理事会等を通じ世界銀行の運営・監督を行っています。
 
世界銀行と日本企業との関係性強化
日本でもSDGsが浸透しつつありますが、2019年7月には経団連がSDGsミッションを米国に派遣し世界銀行と協議を行いました(詳細は、以下のサイトを参照願います:https://www.keidanrensdgs.com/post/2019hlpfsdgsmission)。SDGs達成には年間2.5兆ドルの資金ギャップがあり、先進技術の活用やイノベーションを推進したインパクトの高い投資を民間企業と共に進めていく必要があります。
 
そのため、筆者は、経団連米国事務所と連携し世界銀行日本人職員を対象にBBLを開催し、NTT及びNECから最新のビジネスソリューションを共有してもらい、急速に進む技術革新を如何に途上国の開発課題解決に活用出来るのか意見交換しました。

BBL

日本が持つ技術的な強みや知見を開発課題解決に活かすには、まずは世界銀行のような国際機関に勤める職員に知ってもらい、また、途上国にも認知してもらうことで、包摂的で持続可能な開発を実現するために「あの日本のソリューションを活用したい」と言ってもらえるような機会に繋がればと考えており、今後は保健や教育、防災など他のセクターでもこのような勉強会を開催していければと考えています。