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誰をも受け入れ多様性を活かす~INCLUSIVE&DIVERSITY

2008年に「日本でいちばん大切にしたい会社」として取り上げられた日本理化学工業(本社:神奈川県)の工場が北海道美唄市にある。福祉の町を掲げる当時の美唄市長の沢田孝夫氏が熱心に誘致活動を行い、それに応える形で1962年に美唄工場が誕生した。  
北海道では年間約20万トンのホタテの貝殻が廃棄されているという課題に着目し、開発されたのが、粉が飛びにくい「ダストレスチョーク」というリサイクルと性能向上を両立した商品だ。現在、日本一のチョーク生産を行い、海外などの市場も含めて品質のいいダストレスチョークの売り上げは伸び続けている。教育現場でも使われている。
また、日本理化学工業は積極的な障がい者雇用を推進していることでも知られている。
 
この会社の工場で働く従業員は7割以上が知的障がい者であるが、それぞれの理解力に合わせた工夫を行う事で健常者と変わらない能力が発揮できることを実証している。障がいのある人をただ守るだけではなく、働くことで自立し社会とつながることができるように雇用の場を生み出しているのだ。
 
雇用条件が4つある。①食事や排泄も含め、自分のことは自分でできること②簡単でもいいから意思表示ができること③一所懸命に仕事をすること④まわりに迷惑をかけないこと。これらができれば採用となる。簡単そうなことではあるが、私たち自身が全てできているかは、改めて考えておきたいところだ。
 
実際に作業を教える際には、できるだけわかりやすい方法で仕事の内容を伝え、理解しやすい形にすることが大切になる。例えば、2種類のチョークの原料を赤い容器と青い容器に分けて、量りのそれぞれの分量の所に赤と青で表示することで、視覚に訴えられ、知的障がい者の理解を手助けする。そんな工夫がモチベーションをあげている。
 
“人間の究極の幸せは「人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされること、働くこと」によって得られる”という大山泰弘会長の言葉がある。
日本の障がい者雇用のリーダーシップをとってきた企業だからこそ発信できる説得力のあるメッセージだ。実際に定年後も、パートとして勤務を希望する人が多いというから、まさに終身雇用のモデルでもある。
しかし、厚生労働省による民間企業の障がい者雇用状況の調査(平成27年)では、雇用は着実に進展し雇用者数も増加しているとあるが、実感がない人も多くいるのではないだろうか。外国人であれ、障がい者であれ、LGBTであれ、違いを理解しあい、認め合うことで信頼関係が生まれ、誰もが生きやすい社会を創ることができるのではないだろうか。
 
日本理化学工業はメディアにも多く取り上げられており、様々な地域で講演会も開催している。その他にも、障がい者も共に働く「皆働社会」を、アートを通じて広めるための「KAIDO!project」に参画し、キットパスという商品を使った様々なワークショップを通して年齢・性別・仕事・障がいなどを超えた多くの人たちが絵を描く楽しさを共有しながら、働く幸せを学ぶ場を提供している。
多様性を受け入れることで、日本一のチョーク生産を行う日本理化学工業は、ダイバーシティを自然体で行う日本で一番温かい会社に違いない。

日本理化学工業①
日本理化学工業②

訪問先

日本理化学工業株式会社 美唄工場
日本一強く、優しい会社を目指す。経営的にも強く、精神的にも強く、人に優しく接することができ、人と環境に優しい商品を作り続けている。(日本理化学工業のビジョン)
〒072-0804北海道美唄市東明2条3丁目2-10

記入者

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齊藤 美悠(一般財団法人 北海道国際交流センター)
北海道函館市出身。短大を卒業後、北海道へUターン。所属団体において、留学生を対象とした北海道でのホームステイプログラムなどの国際交流事業を担当。団体のミッションである「多様性を共に支え合う社会づくり」をホストファミリーや留学生、関わる地域の方々と実現を目指している。
2015年から“大沼ラムサール女子会”のメンバーとして七飯町大沼の自然環境・食の恵みなど様々な魅力を発信している。