箕面こどもの森学園とは
箕面こどもの森学園は、『子どもは自ら学ぶ意欲をもち、自らの力で学ぶことができる』という教育観に立ち、子どもたちの自立的な学びを自立支援するオルタナティブ・スクールです。子どもの興味・関心を学習の中心にすえ、子ども自身の生活から学習を組み立てるフレネの教育(※1)やイエナプラン教育(※2)の考え方と方法を取りいれています。生徒は、6歳~15歳までの約60名。クラスは小学部の低学年(1~3年生)、高学年(4~6年生)、中学部に分かれています。2015年にユネスコスクール(※3)に認定され、2016年にはサスティナブルスクールの重点校(※4)にも認定されています。
学校の一日
箕面こどもの森学園での一日を紹介します。朝の最初の20分間はハッピータイムから始まります。クラスごとに一つの輪になり、休みの日のできごと、通学中に見たことなど聞いて欲しいことを自由に話します。
午前中は、主に「ことば」や「かず」の時間で、子どもたち自身が前の週に作った学習計画を元に、国語や算数などの教科に取り組みます。スタッフは子どもたちが困ったことがあれば助言を行いますが、基本的に子どもたちが自分のペースで学習を進めます。共同学習として、英語や数の不思議の学習もあります。午後の時間帯には、主に「プロジェクト」と「選択プログラム」をやります。プロジェクトでは、工作、裁縫、料理など自分のやりたいことを進めます。選択プログラムでは科学実験や、音楽、体育など外部講師を招いた学習があり、それを選択した子どもたちが学習します。スクールワークという時間もあり、例えば修学旅行などの行事が近い時は、この時間に話し合います。隔週で、小学部(/中学部)集会と全校集会があり、学校のルールや行事など全体で話し合います。一日の最後の帰りの会では、また一つの輪になり、今日あったことでみんなに伝えたいことを発表します。
こどもの森では、テストや通知表もありません。それぞれがそれぞれのペースで学んでいるため、誰かと成績を比べる横の評価軸がなく、評価軸は過去の自分と今の自分と比べてどうか、といったような縦の評価軸。テストの成績がどうか、偏差値の高い大学に入ったか、人よりお金を持っているか・いないかというのは、社会に思い込まされた、自らの外にある評価軸で、こどもの森で大事にしているのは、自分の価値は自分であるという価値観なのです。
持続可能な社会を創る話し合いとは
こどもの森の特徴のとして私が特にとりあげたいことは、自分を表現する時間が多い点です。ハッピータイムやスクールワーク、全校集会は、子どもたちが司会や板書、議事録をとり進めていきます。スタッフは必要なときには発言しますが、言い過ぎず、言わなさ過ぎず、子どもたちの主体的な学びを支援し、見守っています。
ある日の全校集会のときです。この日は中学部の子どもたちが、「学校のルールを小学部と中学部でわけたい」という提案がなされました。こどもの森のルールとしては、子どもたちが決めたルールが50個ほどあるのですが、ルールの中には、“低学年には丁寧に説明しないと守れないけれど、中学部にとっては当たり前にできることもある“ため、「中学部では“自分も人もモノも大事にする”などの5大柱だけで行動できるので、中学部独自のルールにさせて欲しい」と発言がありました。この提案に小学部の子どもたちからは「今のルールの中で、中学部にいらないものだけ整理したら?」と提案があったり、スタッフからも「同じ学校でルールを分けるのはいかがなものか」と意見があったりしました。それに対して中学部の子どもたちは、自分たちの意見を述べた上で、「今日指摘されたことはもう一度中学部の中で考えます。だけど、自分たちを信じてチャレンジさせて欲しい」と発言していました。その発言から、子どもたちはこの学校が大好きで、自分たちで学校を作っていこうという意識が高いのだと感じました。またこうした議論は、自分の意見も人の意見も尊重できないとできません。普段から自分の意見を否定されない場づくりがなければ50人近い人の前で発言などできないでしょう。私は「これこそが民主主義だ」と思いました。多数決で決まることなく、大きい声の人の意見で決まることなく、みんなが納得するまで話し合うことが、本当の民主主義で、持続可能な社会を作る根幹なのではないでしょうか。
こどもの森での日々が全て持続可能な社会へと繋がっている気がしませんか。
※1フランスの教育者セレスタン・フレネが公立学校での教育実践の中から開発した教育メソッド。個別学習を基本とし、子どもたちは自分が作成した学習プランをもとに学習を進める。子どもたちの日々の思考や体験を綴った自由作文をテキストとしてことば(=フランス語)を学ぶなど、子どもの生活の中から生まれる関心や疑問から学びを構築することを重視している。
※2ドイツのイエナ大学の教育学教授だったペーター・ペーターゼン教授によって始められた教育。根幹グループと呼ばれる異なる年齢のグループで教育を受けるという特徴がある。また理科・社会科など教科の区別はなく、ワールドオリエンテーションという総合学習の形態を用いている。こどもの森では、3年で1周期でのテーマを決め、学校全体で同じテーマに取り組んでいる。
※3 ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校。現在、世界180か国以上の国・地域で10,000校以上のユネスコスクールがあり、そのうち日本の認定校は1,034校(2017年10月時点)。
※4 ESDの実践力を高め、教育を通じて持続可能な未来をつくることを目指して、実践的な取組をおこなう意欲のある学校が認定されている。文部科学省の委託で公益財団法人ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)が日本全国25校を選定。
訪問先
箕面こどもの森学園とは箕面こどもの森学園は、『子どもは自ら学ぶ意欲をもち、自らの力で学ぶことができる』という教育観に立ち、子どもたちの自立的な学びを自立支援するオルタナティブ・スクールです。子どもの興味・関心を学習の中心にすえ、子ども自身の生活から学習を組み立てるフレネの教育(※1)やイエナプラン教育(※2)の考え方と方法を取りいれています。生徒は、6歳~15歳までの約60名。クラスは小学部の低学年(1~3年生)、高学年(4~6年生)、中学部に分かれています。2015年にユネスコスクール(※3)に認定され、2016年にはサスティナブルスクールの重点校(※4)にも認定されています。
記入者
大橋 寛実(公益社団法人 大阪自然環境保全協会)
大学生時代より、小学校への環境教育の出前授業を始める。卒業後も働きながら、森のようちえんの手伝い、指導者育成、放射能に不安な家族を大阪に1週間招く保養キャンプなど“子どもと自然”に関わる活動を続ける。これまでの活動の中で、「自然の大切さを伝える一方で、自分の日々の暮らしが持続可能ではない」というもやもやが募り、2016年からは田舎のなりわいを学びながら自然に寄り添った暮らしを模索している。