2017年2学期のワールドオリエンテーションのテーマは“平和”でした。学習方法としては、空襲を体験された方のお話を聞いたり、立命館大学 国際平和ミュージアムに行ったりした後、自分がさらに興味を持ったことを調べます。1学期と同じように、保護者や一般向けに学習発表会があったので、それを聞いて来ました。
低学年は“平和”といっても“戦争”のような大きなテーマではなく、「自分や友達、家族の平和」を考え、絵や文字で表現しました。「お母さんの言葉は、私を想って言っているのかも知れない」、「友達とケンカしたら“どうする?”という言葉をまずは言ってみよう」など、身近な人と対立したら、どうすればいいか考えていました。また対立が起こったときに、赤い帽子(暴言・暴力)、青い帽子(我慢)、黄色い帽子(対話)を被った人とどう接するかを劇で発表してくれました。この●●帽子という考え方は普段の生活の中で意見の対立が起こったときも、今自分や相手はどの帽子を被っているのか考えながら話せる手段にもなっているそうです。
高学年は、世界の壁や堀越二郎、動物の密猟、大久野島、ノーベル平和賞、ネイティブ・アメリカンやトルコの初代大統領であるアタテュルクの話などテーマは様々でした。それをパワーポイントや絵本、マンガ、動画で発表してくれました。どの発表も題材そのものを調べているだけに留まらず、自分の中に落とし込んで考え、自分のなりの答えを発表しているように感じられました。「平和とは?」「正義とは?」「幸せとは?」「対立したときどうする?」等々子どもたちの等身大の言葉が聞けました。「戦争を失くすには、世界中の人が戦争について考えたり、暴力ではなく話し合いで解決したり、世界中の人と友達になればいいのに」…そんな子どもたちの純粋な言葉に同調するとともに、平和な世界が実現できていない大人として恥ずかしくなりました。
中学部の発表では、学校の平和、公共のマナーなどの身近な平和、貧困、ペットの殺処分、自衛隊はいるのか、戦争はなぜ起こるのか、アートと平和というようなテーマでの発表でした。戦争はなぜ起こるのかということでは、「好きな人を守りたい」、「戦争は利益になる」、「近隣国が軍事力をあげれば、それに恐怖し、警戒する」というような理由があるのではと考察していました。小学部の発表からは「戦争は嫌だ」という純粋な想いが伝わってきましたが、中学部は、「戦争は嫌だ」だけでは止まらない、戦争の要因である複雑な背景や人間の欲に踏み込んでいる印象でした。学校の平和では、日本の学校の不登校が12万人いる現状や他国の教育状況を挙げ、「日本の学校は平和だとは思えない」という意見がありました。日本の学校は不登校やいじめが多いこと、また正解は一つと求められることが「平和でない」と思う点だそうです。こどもの森では、勉強は自分のペースで、また多数決ではなく話し合いで解決するところが平和だと発表してくれました。
対立や戦争を失くすためには、「それぞれの国が違う国を愛すること」、「悲惨なできごとを心に留めること」、「人の行動には理由があると思い、~すべきではなく、~かも知れないと思い、許せる心の幅を持つこと」、「人の考え方や価値観は違って当たり前だと思うこと」…そんな意見が出ました。これは中学生の考えですが、大人の私たちだってできていないことだと思いませんか?
発表には、スタッフからも保護者の方からも、時に厳しいツッコミがあり、その場ではすぐに答えられない子もいましたが、大人は終始見守る姿勢で子どもたちの言葉を待っていました。また質問は、「●●は違うと思う」という子どもたちの意見を否定するよう発言ではなく「●●については、どう考えているの?」というような、考えをさらに深めるような質問が多かったです。ありのままの自分を受け入れてもらえる環境で日々を過ごしているからこそ、こうした発表ができるのだと思いました。
子どもたちが考える、気候変動と平和、いかがだったでしょうか。子どもたちの成長を見守る周りの大人の姿勢も伝わればと思います。他国のユネスコスクールでは、地域の人を巻き込んで学習に取り組んでいるとのことで、こどもの森でも学習を地域に還元したいという想いがあるそうです。今回の学習発表会など地域の方も参加できるイベントもされていますし、こどもの森を手伝っている方々は、若者からシニア層までどの世代の方もいらっしゃって、開かれた学校という印象を受けました。子どもたちもいろんな人が出入りすることに慣れていて、新しい人と話すことを躊躇しません。ですが、オルタナティブ教育に興味がある人しか訪れないという面は少なからずあると思います。
公教育を否定するわけではありませんが、子どもたちが選べる選択肢の一つとして、このようなオルタナティブ教育が広がればいいと思っています。オルタナティブ教育はまだまだ認知度が低いですので、こんな学校があるということを足元の地域から認知されていくしかけに期待したいです。
こどもの森で育った子どもたちが将来どんな道を進んでも、自分の軸で考えられるという部分は共通しているのだろうと思います。
●低学年の発表の様子
http://kodomono-mori.com/blog/?p=9877
●高学年の発表の様子
http://kodomono-mori.com/blog/?p=9988
●中学部の発表の様子
http://kodomono-mori.com/chugakubu/blog/?p=3727
訪問先
訪問先 NPO法人 箕面こどもの森学園『子どもは自ら学ぶ意欲をもち、自らの力で学ぶことができる』という教育観に立ち、子どもたちの自立的な学びを自立支援するオルタナティブ・スクール。子どもの興味・関心を学習の中心にすえ、子ども自身の生活から学習を組み立てるフレネの教育やイエナプラン教育の考え方と方法を取りいれている。生徒は、6歳~15歳までの約60名。2015年にユネスコスクールに認定。2016年にサスティナブルスクールの重点校に認定
記入者
大橋 寛実(公益社団法人 大阪自然環境保全協会)
大学生時代より、小学校への環境教育の出前授業を始める。卒業後も働きながら、森のようちえんの手伝い、指導者育成、放射能に不安な家族を大阪に1週間招く保養キャンプなど“子どもと自然”に関わる活動を続ける。これまでの活動の中で、「自然の大切さを伝える一方で、自分の日々の暮らしが持続可能ではない」というもやもやが募り、2016年からは田舎のなりわいを学びながら自然に寄り添った暮らしを模索している。