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農業の視点からみる 持続可能な暮らしと学びの場づくり

~食べ物やエネルギーを自給自足し、酪農・チーズ作り・生活・自然、すべてがつながる暮らしの中にある山田農場のESD~
 
 自然と共生し、農業・環境・人がつながり、循環していくための独自のライフスタイルを持ち、小さな循環を大切にしながら暮らす山田さんが思う“持続可能な社会の在り方”とは何だろう。そこにある学びは、未来へどのようにつながってゆくのだろう。
 
 北海道函館市から車で約40分の七飯町大沼エリアにある「山田農場」。オーナーである山田圭介さんは、共働学舎新得農場でチーズ作りを学び、10年前に奥様のあゆみさんと七飯町へ移住。3人の子どもたちと家族5人で暮らしている。
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 山田さんは、自分たちの暮らしを決して特別なものだとは感じていない。
昔は皆、地域で人々が助け合い、身の回りにあるもので持続していたのだから、昔の人々の知恵を借りて私たちは進化しなくてはならないと感じている。そして、いつの間にか“持続可能”ではなくなってしまった私たちの暮らしに、その知恵や精神を繋げ“持続可能が当たり前”になってほしいと考えている。
 
 “自給自足”の暮らしには、知恵や知識が必要だと思う。今の世の中にはモノが多く、なんでも買えてしまう。そんな消費社会の枠組みの中だけでは、知恵は生まれないだろう。暮らしの中には自然が必ず存在し、私たちはその恩恵を受けて生きている。その一方で、自然災害によって暮らしや考え方に変化が起きることもある。原発事故等で環境が悪化し、将来を担う子どもたちの未来が危機にさらされる事を私たちは本当に実感しているだろうか。他人事になってはいないだろうか。豊かさの中に“自然”を壊す原因があることを感じているだろうか。すべてを自給自足することができないとしても、自然の循環の中に暮らす私たちにできること、やらなければならないことがある。学びを暮らしに繋げるためには、地域や世界の課題と向き合い、地域の中から学び合うことも重要である。
 
 山田農場で作られるヤギと羊の生乳を使った“ガロ”というチーズは、地元にもファンが多いだけでなく、レストランやパン屋でも販売され、雑誌でも紹介されるなど、評判は日本各地へと広がっている。そこには、山田さんの人柄やチーズに対する情熱、自然と共に生きる姿勢もまた人々に影響を与えている。チーズ作りの他にも、北海道道南の美味しい野菜を子どもたちに送りたいという思いを持つ仲間と共に“福島の子どもたちに野菜を贈る会”を立ち上げ、野菜は地域の農家からの頂きものや、規格外品などでお金はほとんどかけずに、地域の中で協力し合い、思いを同じくする人の輪を繋げ、福島の子どもたちへ贈られている。また、暮らしや環境、社会問題と向き合うという事の重要さを見つめなおすために“憲法に関する映画の上映会”なども開催している。決して他人事ではないということを学び、自分事として捉え、自分たちも何か行動を起こさなければと自然と感じるようになる学びの場が、地域の人々の刺激になっている。
 
 現代のようなその場限りの繋がりではなく、循環していかなければ意味がない。ライフスタイルには違いがあるが、それぞれの持続可能性を考え、仲間との繋がりも広げていくことで、大きな車輪は回せないかもしれないけれど、小さな車輪はしっかりと回す。こういう形が地域の中にたくさんあれば、持続可能な社会に繋がるのだろう。
 
 持続可能な社会を作るためには、私たちひとりひとりが日々の暮らしや価値観を見直し、危機感を持たなければならない。山田さんのように、家族や仲間と話し合い、学び合う時間を持ち続けていきたいと思う。

訪問先

山田農場チーズ工房
2006年から農場を開墾し、畜舎・住宅・チーズ工房などを自分たちで建て、2008年からチーズの販売を始める。山羊・ヒツジを放牧し、地元で獲れる作物で育て、なるべく自然な飼い方で、自然なチーズ作りをしている。自給自足が目標で、お金のかからない、できるだけエネルギーを使わない持続可能な暮らしをしている。
北海道亀田郡七飯町上軍川900-1 Tel/Fax 0138-67-2133 

記入者

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齊藤 美悠(一般財団法人 北海道国際交流センター)
北海道函館市出身。短大を卒業後、北海道へUターン。所属団体において、留学生を対象とした北海道でのホームステイプログラムなどの国際交流事業を担当。団体のミッションである「多様性を共に支え合う社会づくり」をホストファミリーや留学生、関わる地域の方々と実現を目指している。
2015年から“大沼ラムサール女子会”のメンバーとして七飯町大沼の自然環境・食の恵みなど様々な魅力を発信している。