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地域に根差したフェアトレードをめざして

フェアトレードとはコーヒーなどの商品を、現行貿易体制では立場の弱い途上国の生産者から適正な金額で購入することで、生産者の生活を持続可能なものにし、かつ自立を支援する国際協力の方法である。一般的に多くのフェアトレード商品は国際協力団体や自然食品などを扱う店舗で多く販売されているが、現状として購入する層は国際協力や環境問題などに関心のある方に留まっている。
 
こうした現状の中、国際協力に関心のない方も含め、より多くの方にフェアトレードを知る機会を増やす試みを実施しているのが、香川県高松市を中心に活動しているフェアトレード団体「halqa-はるか」である。
 
1つ目の取り組みとして、企業へ「オフィスコーヒー」という形でフェアトレードコーヒーを届けている。そこでは仕事の合間でのコーヒーブレイクにフェアトレードコーヒーを飲むことで国際貢献ができるほか、企業にとっても、フェアトレード商品を導入することで、自社のCSR活動に繋がる。そして何よりその企業の従業員にフェアトレードそのものを知る機会を提供している。
 
2つ目の取り組みとしては、国際協力団体だけでなく、より多くの団体へフェアトレード商品の販売を促進する試みも行っている。その一例として、障がい者作業所の作業共通受注窓口団体「香川県社会就労センター協議会」との取り組みが挙げられる。
同協議会では施設外就労訓練の一環として、高松市役所でお弁当やパンなどを販売しているが、そこで販売されているのがフェアトレードコーヒーで、障がい者団体の関係者に国際協力活動にも目を向けていただくことや、逆に国際協力の関係者が障がい者施設の活動を知る機会にもなっており、フェアトレードコーヒーを通じて、様々な分野の団体同士で相互の活動を理解、促進することにつながっている。
 
また地域と連携してフェアトレードを広める活動も展開している。高松市では自治会や婦人会、NPO、企業など地域にある全ての団体を対象とした「コミュニティ協議会」を結成して、市民が中心となって地域活動を進めている。その地域活動の拠点となるコミュニティセンターの中にもフェアトレードコーヒーを導入することで、様々な活動団体がコーヒーを囲んで交流する姿が見られ、より多くの団体や個人に、フェアトレードに親しむ機会を創出している。また導入をきっかけとした新たな動きとして交流カフェやコミュニティレストランを始める地域も出始めており、まさにフェアトレードが地域の経済や雇用にも繋がっている。
 
これまで地域で個々に活動していた団体がフェアトレードコーヒーを通じて国際問題や障がい者の問題などを知り、地域で自ら考えるようになり、各々の問題の解決だけでなく、各種団体と協働して新たな動きへと発展していくという、まさにESDとしての視点が活かされている動きと見ることができる。

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現在のhalqa-はるかのスローガンはフェアトレードを使って「繋げよう世界と地元の幸せを」。今後、このような動きを高松市内のみならず、四国全体でも広げていこうと考えており、地域の自治会や企業・高齢者・障がい者施設、NPOなどと協働して年々低下している「地域力」を少しでも維持していくことができればと代表の丸山輝裕氏は語る。
 
世界の問題も知りながら、地域の問題にも向き合う。フェアトレードは生産者の生活、経済を持続可能なものにするだけでなく、地域の人や活動、あるいは地域と世界をつなぐ役割も果たしている。
地域活動にフェアトレードコーヒーを導入することで、フェアトレードそのものがより身近な存在になるし、個々の活動をより活性化させるきっかけになるかもしれないと感じた。

訪問先

フェアトレード団体 halqa-はるか

記入者

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井上紘貴(岡山市京山地区ESD推進協議会)
2005年に岡山市京山地区におけるESD活動に参加。2014年2月の第1回ESD日本ユース・コンファレンスに参加、2014年11月のESDに関するユネスコ世界会議でもボランティアやオブザーバーとして参加するなど、10年以上一貫してESDに携わっている。活動の中で培ってきたものは「学びあい」、「地域への愛着」。現在は民間企業で働きながら、活動を両立させている中で、若者の参加しやすい場づくり、活動が継続できる仕組みづくりを模索している。