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“広島=平和”にESDを取り入れた学び

“平和”について考え、継承していくための参加型ワークショップと学校教育への活用
 
 広島市は原爆が投下されたこともあり、平和学習が盛んというイメージが強い。その中でNPO法人これからの学びネットワークは2008年より「ピースクリエイターになろう」ワークショップを実施している。一般的には、“広島=平和学習”という印象が強い中、同団体はどのような学習を展開しているのか、担当の河野宏樹さんにインタビューをした。
 
Q1:活動の対象は?
 活動を開始した当初より県外(おもに関東)から修学旅行で訪れる中学生、高校生を対象に行ってきており、現在では外国人留学生、JICA研修生も受け入れ、年間10回以上開催している。
 
Q2:なぜ「参加型」学習を取り入れているのか?
 講話とワークショップは別で設け、講話でインプットしたものをアウトプットすることで自己表現力を養う狙いがある。
 これまでの広島における平和教育はインプット主体であった。こうした過去の体験そのものは時間が経つにつれて、被爆者の高齢化も進んでいるため、継承が難しくなってしまう。しかしながら、生身の人間が経験して感じたことは決してコピーすることができないものだからこそ、実相を知って、自分が考えた物事を言葉にして表現することこそが継承のひとつの形だと同団体は考えており、それゆえに参加型のワークショップ形式をとっている。
 ワークショップで「平和」そのものについて意見交換をしていくことによって、参加者それぞれが考える平和の定義が異なっており、単純に戦争がないことだけでないことに気づいた、自分自身の考え方、視野を広げることができた、と参加者から声があがっている。
 
Q3:ワークショップ前と後で参加者における意識の変化などは?
 継続的な評価は行っておらず、現状としては指標もないため、難しい。
 しかしながら、継続的な評価に関しては教育現場における「ひろしま平和ノート」の活用が期待される。これは広島市が2013年度から全ての市立小中学校、及び市立高校214校に配布している平和学習用の教材で、小学校から高校までの12年間一貫で平和教育の体系化を図っており、小学1~3年生向け、4~6年生向け、中学生向け、高校生向けの4種類がある。いずれの監修にも関わっており、小学1~3年生ではそれぞれ生命の尊さ、4~6年生では被爆地復興、中学では世界平和の課題、高校では平和実現へ向けた広島の役割とそれぞれの学習段階に応じてテーマを設定しており、その中でも主体的に学べるよう、各自で調べたり,意見を出し合ったりといった学習方法が取り入れられている。
 小学校では担任がすべての教科を担当していることから授業の中へ導入しやすいが、、中学、高校と進むにつれ、他の教科との兼ね合いもあり、時間の確保が難しい現状がある。
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Q4:活動をしているうえでの課題点は?
 日本人と外国人留学生と合同でプログラムを開催する際の教材が不十分であること、日本人と留学生との接点の出し方が難しいこと、プログラムに参加する前と参加した後の継続的な評価が難しいことである。
 
Q5:今後の展望は?
 今後の展望としては、現状のプログラムを改良して、複数言語での教材づくりを強化していき、スタッフの増強も図りたいとしている。ほか、将来的には観光客や一般市民にも適用できるようなプログラムを開発して実施したい。

訪問先

特定非営利活動法人これからの学びネットワーク
”参加体験型”の学びの場を企画運営することを通じて、これからの”人づくり”を促進することを目的に2008年に設立。「ピースクリエイターになろう」ワークショップの他にも、ファシリテーションやプログラムデザイン等をテーマとした指導者養成講座、小学生を対象とした放課後学習事業、教育支援事業として小中高の総合学習や大学のゼミでコミュニケーションに関する出張授業を行ったり、国際協力事業として海外研修生を受け入れている。

記入者

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井上紘貴(岡山市京山地区ESD推進協議会)
2005年に岡山市京山地区におけるESD活動に参加。2014年2月の第1回ESD日本ユース・コンファレンスに参加、2014年11月のESDに関するユネスコ世界会議でもボランティアやオブザーバーとして参加するなど、10年以上一貫してESDに携わっている。活動の中で培ってきたものは「学びあい」、「地域への愛着」。現在は民間企業で働きながら、活動を両立させている中で、若者の参加しやすい場づくり、活動が継続できる仕組みづくりを模索している。